著者
畑中 敏夫
出版者
明治大学大学院
雑誌
明治大学大学院紀要 文学篇 (ISSN:03896072)
巻号頁・発行日
no.19, pp.39-47, 1982-02-10

マクシム・ルロワはその『サント・ブーヴの思想』の中でコンディヤックを始祖とする感覚論哲学がサント・ブーヴに及ぼした影響について述べているが、特に18世紀後半のパリ大学医学部教授であり、生理学的心理学の創始者カバニスの影響を重視している。このカバニスは、サント・ブーヴの心理的自伝とも言い得る『快楽』の中でその名を挙げ、主人公アモリーがその哲学的見解に強い印象を受ける場面がある。サント・ブーヴがその文学活動を始める以前医学の勉強を続けていたことは衆知の事実である。1818年パリに出てきたサント・ブーヴはコレージュに通うかたわら、ほぼ19歳頃より毎晩アテネ学校に、生理学、博物学の講義を聞きにいっていたのであるが、この学校に通学したことが、彼の批評の形成に大きな役割りを与えることになった。