著者
畑井 克彦
出版者
Japan Institute for Group Dynamics
雑誌
集団力学 (ISSN:21872872)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.176-194, 2014

<tt> 筆者(高校教諭)は、</tt>2003 <tt>年から約</tt>10 <tt>年間、兵庫県伊丹市で、地元商店街の地域住民と高校が連携して、高校生を教育する試みを行ってきた。具体的には、高校生に商店街の店舗で活動する機会を与え、「社会人デビュー」をしてもらう活動、すなわち、「商店街学校」の試みである。この活動を通じて、高校生をも含む住民の絆も紡がれていく。本論文の前半では、「商店街学校」が着想されて以来、現在までの経緯を紹介する。</tt><br><tt> 「商店街学校」は、教室で教科書に沿って行われる教育とは大きく異なっている。お定まりの筋書などない。教師と生徒が、商店街を舞台に、筋書を書きながら演じるドラマと言ってもよい。そのドラマの中で、高校生は、主体的に「自ら筋書を書き、演じること」の苦労と喜びを味わい、人間として成長していく。しかし、あくまでも高校教育の一環である限り、「筋書のないドラマ」を生徒とともに演じていくことは、教師にとって大きな挑戦でもある。本論文の後半では、「商店街学校」のハイライトでもある「ハロウィンパーティ」に注目し、その準備段階での生徒の動向と、それに伴う教師の迷いと判断を時系列的に述べる。</tt><br><tt> 「地域が子どもを育てる」とは言うものの、その実例は少ない。本論文は、その貴重な実例を、内部者の苦労をも含めて発信するものである。</tt>