著者
畔上 耕児
出版者
農業環境技術研究所
雑誌
農業環境技術研究所報告 (ISSN:09119450)
巻号頁・発行日
no.11, pp.p1-80, 1994-06
被引用文献数
1

箱育苗のイネ苗にときに甚大な被害を与える新病害,苗立枯細菌病の病原を明らかにした。この細菌の諸性質を調査した結果,新種と判断されたのでPseudomonas plantariiと命名して報告した。本細菌は非ベンゼン系芳香族化合物トロポロンを生産するが,それはシデロフォア(鉄キレート物質)の性質を有し,かつ本細菌の病原力と病徴発現に関与している。この物質の性質を利用した本細菌の迅速な同定法と効率的な検出法を考案した。本細菌は種子伝染し,育苗過程で急速に増殖して箱全面の苗を枯死させることもあるが,田植え後は急速に減少する。しかしイネ株元で生存し続け,もみに感染して潜伏し,翌年の第一次伝染源となる。本細菌は苗では鞘葉,葉鞘の気孔,傷口,根の傷口から侵入し,もみでは穎のおもに下表皮の気孔から穎そのものの内部に侵入し,いずれも柔組織の細胞間隙などで増殖して広がっていく。発病は30~ 34℃でもっとも激しいが,発病に至る苗はほとんどが播種後4日以内に感染したものである。また,本病の防除法を明らかにした。