著者
畠 賢治
出版者
国立研究開発法人 産業技術総合研究所
雑誌
Synthesiology (ISSN:18826229)
巻号頁・発行日
vol.9, no.3, pp.165-177, 2016 (Released:2016-11-03)
参考文献数
15
被引用文献数
1 5

飯島澄男博士による単層カーボンナノチューブ(CNT)の発見から20年以上を経た現在も、単層CNTは既存の材料ではなし得ない電気伝導性、熱伝導性、機械的強度を実現する革新的材料として期待され、世界各国で研究開発が続けられている。しかし単層CNTは、一足先に商業化された多層CNTに比べて合成の成長効率が低く高価格になるため、未だ工業的に利用されているとはいえない状況である。産業技術総合研究所で開発された革新的な気相合成法のスーパーグロース法によって単層CNTが抱えていた複数の技術的課題が一挙に解決され、工業的応用への扉が大きく開かれた。高品質な単層CNTの合成が可能なスーパーグロース法の量産プロセス開発という、実用化を見据えて進められた技術開発について、産学連携の視点から述べる。