- 著者
-
今井 登
- 出版者
- 国立研究開発法人 産業技術総合研究所
- 雑誌
- Synthesiology (ISSN:18826229)
- 巻号頁・発行日
- vol.3, no.4, pp.281-291, 2010 (Released:2010-12-24)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
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4
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日本全土における海と陸の元素分布を調査し、日本の地球化学図を初めて作成した。これにより日本列島の海と陸のバックグラウンド値が明らかになり、陸から海への元素の連続的な流れを知ることができるようになった。地球化学図作成に用いた試料は、陸では河川堆積物3,024個、海では海底堆積物4,905個で、分析した元素はヒ素、水銀、カドミウムなどの有害元素を含む53元素である。この研究では、特定の地域で確立した方法を適用し、現実的な実施可能性を考慮した発想の転換により一挙に全国カバーへの展開を実現し、陸域から海域、さらに土壌へと対象を拡大している。地球化学図は、人間・産業活動による土壌や海底堆積物の汚染の評価にも使用される。また、結果は出版やweb公開により、社会的なインパクトを与えている。本稿では、日本の地球化学図を作成するために採った研究シナリオを述べ、次に試料採取から試料処理、化学分析・元素濃度測定、地図作成、データ公開に至る一連の研究プロセスを述べる。