著者
笠井 千夏 海部 忍 柿本 直子 畳谷 一 田村 靖明 田村 英司 土橋 孝之 高田 信二郎
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2012, pp.48100973-48100973, 2013

【目的】当院は地域医療に貢献することを病院理念として掲げ,リハビリテーション部においても21年間継続し行政委託事業を実施している。当院では,平成18年度行政委託事業の一つとして「阿波踊り体操リハビリ編」を制作した。その後,対象者の症状や状態に合わせて選択できるよう「ロコモ編」,「寝たまま編」を制作するに至った。近年,運動器障害のために要介護状態となる危険の高い状態はロコモティブシンドローム(以下ロコモ)と呼ばれ,認知度が高まっている。本体操の構成は,徳島県の伝統文化である阿波踊りをアレンジし,阿波踊りの音源を基にした創作音楽に,当院セラピストが考案した5分間のリハビリ体操を組み合わせたものである。本体操は阿波踊りのイメージを残しつつ下肢運動機能向上と障害予防を目的としたストレッチ,筋力強化等を中心とした運動に焦点を当てた体操となっている。今回,「阿波踊り体操ロコモ編」を6ヵ月実施した結果を報告する。【対象及び方法】対象は当院が在所する吉野川市にて行政委託事業として実施されている介護予防教室に参加した106名(男性11名,女性95名:平均年齢74±14歳)である。対象者には阿波踊り体操ロコモ編を実施した前後において身体機能評価とアンケートを実施した。方法は阿波踊り体操ロコモ編を実施前と6ヵ月実施後に身体機能評価としてTimed Up &Go(以下TUG),Functional Reach Test(以下FRT),握力,膝伸展筋力(ANIMA Corporation社製μTas F-1)を理学療法士が測定した。その結果を統計学的分析にて,t検定(p<0.05)を用いて行った。また,実施前後に紙面でのアンケート調査を対象者に実施した。【説明と同意】対象者には研究の目的,内容,および個人情報の取り扱い関して十分に説明を行った上で同意を得て行った。【結果】介護予防教室実施前後を通して身体機能評価が可能であったのは69名であった。阿波踊り体操ロコモ編実施前後においてFRT,膝伸展筋力では若干の向上が認められたが,統計学的分析では有意な差は認められなかった。しかしながら,阿波踊り体操ロコモ編に対するアンケート調査では体操に対する感想にて「楽しかった」との回答が全体の86%,「楽しくなかった」が0%「どちらでもない」が13%,「無回答」1%と体操に対する印象は良かった。また,6ヶ月間の介護予防教室終了後『ロコモ編を継続したいですか』との質問に対しては「はい」が73%,「いいえ」が0%,「どちらでもない」が17%,「無回答」10%と体操の継続に対する意識の高さが認められた。【考察】阿波踊り体操ロコモ編における今回のアンケート調査で,本体操は満足度が高く,継続性が高いという前向きな回答を得られた。健康体操を継続するためには,それが楽しくなければ継続できない。阿波踊り体操ロコモ編は地元伝統文化の特性を活かした結果,親しみやすく,楽しんで行える体操であったと推測される。今後の課題として, 身体機能面での効果や実施回数の更なる検証が必要であると考える。また,本体操は日本運動器科学会学術プロジェクトの承認を受け,平成24・25年度事業として指導者の育成,更なる地域への普及活動に努める予定である。【理学療法学研究としての意義】本体操は地元伝統文化の特性を活かし,県下への普及を目的に考案され,実施した体操である。これらの働きかけは地域リハビリテーションを展開していく上で,有意義であると考える。