著者
村尾忠廣 疇地希美
雑誌
情報処理学会研究報告音楽情報科学(MUS)
巻号頁・発行日
vol.1999, no.51(1999-MUS-030), pp.21-26, 1999-05-29

小泉文夫は日本の伝統音楽には基本的にアウフタクトが存在しないと述べた。旋律の開始が弱拍の一部から強拍にグループされない、という意味である。これは、アウフタクトをつくる言語的要因、すなわち、冠詞や前置詞がなく、強弱アクセントをも有しないという日本語の特質に基づいている。それゆえ、日本の大衆音楽にもアウフタクトはもともと少なかった。しかし、60年代後半から70年代の日本の大衆音楽にはアウフタクトのものが急速に増えている。強弱、上下拍意識が薄く、さらに前置詞、冠詞をもたないという日本語の特徴を残したままにアウフタクト(上拍)の歌謡曲が発展を始めたのである。本論は、 3モーラ音節から始まる歌謡曲を一つの切り口としてアフタクト歌謡曲の統計的分析を行い、その年代的な特徴を質的に構造分析したものである。