著者
花岡 俊仁 鈴木 宏光 中川 和彦 福原 哲治 小林 一泰 佐伯 英行 白川 敦子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.71, no.1, pp.62-66, 2010 (Released:2010-07-16)
参考文献数
16

症例は64歳,女性.糖尿病の既往がある.2002年6月血痰,喀血が出現し,当院を受診した.胸部CTにて左上葉中心に淡いスリガラス様陰影を認めた.気管支動脈造影にて2カ所血管の拡張部を認め,塞栓術を施行した.その後血痰は減少し,肺の陰影も消退したが,左上葉に8×5mm大の小結節影が残存した.経過観察となったが,2003年1月再び喀血が出現し,胸腔鏡補助下に左上葉切除術を施行した.病理組織検査にて肉芽形成を伴う気管支炎像があり,一部にムコールの菌塊が充満する像を認め,肺ムコール症と診断した.手術後6年2カ月を経過し,再発なく糖尿病外来に通院中である.肺ムコール症の頻度は稀で,免疫能低下状態で発症することの多い予後不良な疾患である.自験例は糖尿病があり二次性といえるが,左上葉の小結節影にムコールが付着・増殖した腐生性の要因も考えられた.
著者
花岡 俊仁 藤井 徹也 高橋 寛敏 石田 数逸 三原 康生 白川 敦子
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.60, no.10, pp.2628-2631, 1999-10-25 (Released:2009-08-24)
参考文献数
6

症例1は72歳,女性,胸部異常陰影を主訴に受診した. CTにて右S8に径2cm大の不整形の結節影を認め,開胸下に肺部分切除術を施行した.病理組織学的に異物肉芽腫の中にPAS反応陽性の球状の菌体を多数認めた.症例2は38歳,女性.検診にて胸部異常陰影を指摘され当院を受診した. CTにて右S6に径1cm大の境界明瞭な結節影があり,娘結節を伴っていた.胸腔鏡下肺部分切除術を施行し,凝固壊死に陥った腫瘤の内部にPAS反応およびGrocott染色陽性の球状の菌体を多数認めた. 2症例とも基礎疾患はなく肺のみに病変を認め,原発性肺クリプトコッカス症と診断した.症例1は手術後4年,症例2は1年6カ月を経過し,再発を認めていない.本症は比較的稀な疾患で,臨床像と画像所見は特徴に乏しく,術前確定診断が困難な症例も多い.胸膜直下に病変をつくりやすく孤立結節影を呈することが多いため,侵襲の少ない胸腔鏡下手術の良い適応と考えられる.