著者
三枝 優子 遠藤 眞美 地主 知世 白田 翔平 山岸 敦 高柳 篤史 野本 たかと
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.160-169, 2021-06-30 (Released:2021-10-31)
参考文献数
27

障害児者の効率的なブラッシングには,適切な歯ブラシの選択が重要である.しかし,歯ブラシ機能による客観的な選択の指標はない.本研究ではヘッドサイズによる機能の違いについて平面モデルを用いて評価した.スーパーテーパード毛(以下,ST毛とする)の歯ブラシ(DENT.EX systemaシリーズのgenki(以下,GRとする),genki f(以下,GFとする),42M(以下,SYとする))と,コンパクトヘッドでラウンド毛の歯ブラシ(DENT.EX 3S(以下,DSとする))を選択し,清掃性および毛の到達範囲として剝離面積,毛のたわみの指標として臨界ストロークおよび刷掃時の垂直方向における剝離幅の増加ΔWを評価した. 完全剝離面積は,回数や荷重に関係なくGR<GF<SY<DSの順に広かった.完全+部分剝離は,本条件の中で低い荷重,少ないブラッシング回数でヘッドサイズが大きいGRが最も小さい値であった.一方,高荷重およびブラッシング回数が多い場合にはヘッドの大きいほうが広い面積となった.臨界STは,毛の太いDSが最も短く,また,ヘッドが大きいと臨界STが小さかった.ΔWはラウンド毛に比較してST毛で大きく,ST毛の歯ブラシ間ではヘッドが大きいほど小さかった.ブラッシングスキルの獲得に苦慮する障害児者においてスーパーテーパード毛の大きいヘッドサイズの歯ブラシは広く清掃できる可能性があるが,清掃性を高く磨くためにはラウンド毛に比較して回数やブラッシング力の必要性が示唆された.