著者
杉原 直樹 高柳 篤史 石塚 洋一 佐藤 涼一 鈴木 誠太郎 小野瀬 祐紀 今井 光枝 江口 貴子
出版者
一般社団法人 口腔衛生学会
雑誌
口腔衛生学会雑誌 (ISSN:00232831)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.66-72, 2020 (Released:2020-05-15)
参考文献数
26

顆粒配合歯磨剤の市販が開始されて,30年以上が経過しているが,その効果をランダム化比較試験を用いて調べた報告はほとんどなく,現状でその効果が明らかになっているとはいえない.本研究の目的は,顆粒配合歯磨剤の歯垢除去効果および歯周組織への影響を検討することである.対象者は歯周病メインテナンスのために歯科医院に通院している患者であり,研究デザインはランダム化二重盲検クロスオーバー試験である.顆粒配合歯磨剤と顆粒非配合歯磨剤を1か月のウォッシュアウト期間をはさんでそれぞれ3か月間使用し,各歯磨剤の使用開始時と終了時に,同一の歯科医師による検診を行った.PCR値と隣接部位のQHI値の変化は,顆粒配合歯磨剤を使用した場合に有意な改善が認められた.歯周組織の状態,歯肉出血の状況,および歯周ポケットの深さについては有意な差は認められなかったが,顆粒配合歯磨剤を使用した後すべての検診項目の値の改善が認められた.また,クロスオーバー試験における持ち越し効果は認められなかった.なお,顆粒配合歯磨剤使用後に顆粒状物質が残存したのは1名1歯であり,特に炎症,悪化などは認められなかった.顆粒配合歯磨剤は顆粒非配合歯磨剤よりも歯口清掃効果が高かった.しかしながら,歯周組織に対する影響においては顆粒非配合歯磨剤との差は認められなかった.
著者
三枝 優子 遠藤 眞美 地主 知世 白田 翔平 山岸 敦 高柳 篤史 野本 たかと
出版者
一般社団法人 日本障害者歯科学会
雑誌
日本障害者歯科学会雑誌 (ISSN:09131663)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.160-169, 2021-06-30 (Released:2021-10-31)
参考文献数
27

障害児者の効率的なブラッシングには,適切な歯ブラシの選択が重要である.しかし,歯ブラシ機能による客観的な選択の指標はない.本研究ではヘッドサイズによる機能の違いについて平面モデルを用いて評価した.スーパーテーパード毛(以下,ST毛とする)の歯ブラシ(DENT.EX systemaシリーズのgenki(以下,GRとする),genki f(以下,GFとする),42M(以下,SYとする))と,コンパクトヘッドでラウンド毛の歯ブラシ(DENT.EX 3S(以下,DSとする))を選択し,清掃性および毛の到達範囲として剝離面積,毛のたわみの指標として臨界ストロークおよび刷掃時の垂直方向における剝離幅の増加ΔWを評価した. 完全剝離面積は,回数や荷重に関係なくGR<GF<SY<DSの順に広かった.完全+部分剝離は,本条件の中で低い荷重,少ないブラッシング回数でヘッドサイズが大きいGRが最も小さい値であった.一方,高荷重およびブラッシング回数が多い場合にはヘッドの大きいほうが広い面積となった.臨界STは,毛の太いDSが最も短く,また,ヘッドが大きいと臨界STが小さかった.ΔWはラウンド毛に比較してST毛で大きく,ST毛の歯ブラシ間ではヘッドが大きいほど小さかった.ブラッシングスキルの獲得に苦慮する障害児者においてスーパーテーパード毛の大きいヘッドサイズの歯ブラシは広く清掃できる可能性があるが,清掃性を高く磨くためにはラウンド毛に比較して回数やブラッシング力の必要性が示唆された.