著者
白石 智宙
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.16, pp.237-254, 2020 (Released:2022-01-19)
参考文献数
33

本稿は,既存の地域内経済循環概念のなかに,自治体を起点とした再帰的かつ連続的な資金の動きを「財政循環」という概念によって位置づけた。それは,単なる経済効果の一環としての自治体収入増減効果とは異なり,政府間財政関係において自治体の収入や支出のあり方を規定する諸要素を考慮に入れた点に独自性がある。そして,岡山県西粟倉村の「百年の森林事業」をケースとして実証分析を行い,「財政循環」の実態とそれを規定する諸要素との関係を定量的に示すことができた。具体的には,単純な税収と財産収入の増加による収入増よりも,国庫支出金や地方交付税を通じた収入への影響を加味した収入増のほうがより実態を反映しており,地域産業政策を適切に評価できることを示した。