- 著者
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白鳥 令
- 出版者
- NPO法人 日本シミュレーション&ゲーミング学会
- 雑誌
- シミュレーション&ゲーミング (ISSN:13451499)
- 巻号頁・発行日
- vol.30, no.1, pp.1-10, 2020-07-10 (Released:2020-07-10)
政治は未来の目標を問題とする.「未来の目標を選択する行為」が政治である.政治が未来の目標を問題とする限り,誰も絶対的正しさを主張することはできないが,それゆえに,すべての人々が自分は正しいと主張できる.政治的決定は社会的決定として自分自身の将来を規定することになるから,すべての人々が,自分の問題として政治を語ることになる.こうして,政治の世界は,不確定な未来に自分の信念をかけて人々が相互に争うゲームの世界と強い類似性を示している.だが,政治が「未来の選択の行為」であり,目標を争うことを本質としている限り,初めから最終目標が設定され,そこにいかにして少ないコストで早く到達するかを目指す伝統的なゲームは,政治の本質を無視したものであり,政治の分析には不十分と言わざるを得ない.ゲームのプレイ中に最終目標と基本的価値観の変更を可能とする新しい発想のゲームを求めて,筆者は,この「政策形成と評価のシミュレーション&ゲーミング」特集号の「巻頭言」の中で,「政治とは何か?」の分析から,「イデオロギー」と「ユートピア」という人々を社会変革へと導く思想の二つのスタイルの対比まで,政治のさまざまな側面を検討し,「新しい発想のゲーム」を求める模索をしている.