著者
百田 止水
出版者
山鹿市立来民小学校
雑誌
奨励研究
巻号頁・発行日
2012

1 研究の目的本研究では,デジタルコンテンツを活用するにあたって,教師の「授業設計の枠組み」がどのようにその活用に影響を与えているのかを調査し,誰もが授業に効果的に位置づけることができるデジタルコンテンツのための設計の条件を明らかにする.そして,その条件の下制作したデジタルコンテンツの効果を検証する.2 研究の方法本研究では,ベテラン教師5名と初任教師5名を対象として,それぞれの「授業設計の枠組み」を調査する.その上で「授業設計の枠組み」と「デジタルコンテンツの機能」とが合致する条件を明らかにし,誰もが授業への位置づけ方や活用の仕方が分かるようなデジタルコンテンツを小学校算数科を例として開発する.そして,熊本市および山鹿市の算数科教育の研究会に所属しているベテラン教師と新任教師を対象に,開発したデジタルコンテンツを活用する学習指導案を作成する調査をする.学習指導案にどのようにデジタルコンテンツを位置づけたかを分析し,効果を検証する.3 研究の成果初任教師は,デジタルコンテンツを資料提示や問題の説明のために授業に位置づける傾向があることが分かった.それに対して,ベテラン教師は,デジタルコンテンツを児童が問題解決する学習の様々な過程に自分なりに位置づけようとしていることが分かった.このことから,初任教師は解説的な「説明型」コンテンツについては,「授業の枠組み」の有無とコンテンツ機能の有効利用とのかかわりは高くなく,限定された機能故に有効に活用して授業設計することができると言える,しかし,筆者の「授業設計の枠組み」が反映した「ルール発見型」コンテンツは,アイディアの生成・交流の促進・算数のきまりの発見等の「授業設計の枠組み」をもっていることが機能の有効利用のために必要であると考えられる.「ルール発見型」コンテンツを他者に提供する場合は,コンテンツそのものから「授業設計の枠組み」を推察することができる設計にすることが,その効果を十分に反映した授業設計の実現には重要である.