著者
盛 穎魁 植田 憲
出版者
Japanese Society for the Science of Design
雑誌
日本デザイン学会研究発表大会概要集
巻号頁・発行日
pp.213, 2013 (Released:2013-06-20)

黄酒は、中国における伝統的米を原料とする最も古い醸造酒である。中華文明の発展とともに形成された黄酒文化が、中国の伝統的生活文化のひとつとして極めて巨大な社会的、文化的価値がある。一方、1978年に始められた「改革開放」政策以降、中国は著しい経済発展を遂げてきた。しかしながら、人々が豊富、便利な物質的生活を享受した時に、伝統的生活飲食習慣、先人から伝承された習俗、自然に対する理念など伝統生活文化が30年間で急激に変化した。伝統的黄酒文化も例外ではない。 本研究は、中国江南地域における黄酒文化に関する多面的な調査に基づき、改革開放以来の農村地区の伝統生活文化と地域のアイデンティティが失われた現状を把握し、中国黄酒文化の意味と黄酒づくりの意味を探求することを目的とする。中国江南地域における湖北省房県の黄酒の事例を通して、古来から記録に残っていない黄酒文化の価値と「黄酒づくり」の文化的意味を再確認するとともに、中国農村地域における伝統的生活文化の多様性と重要性を再認識し、共有文化を守る思いを確かめ、このような伝統文化をこれからの世代へ伝えていくことを望む。