著者
眞田 治子 Haruko SANADA
出版者
国立国語研究所
雑誌
日本語科学
巻号頁・発行日
no.11, pp.100-114, 2002-04

東京学芸大学幕末から明治初期にかけて,西欧文化との接触や文明開化の影響によって数多くの新しい単語が生じた結果,日本語の語彙はその基本的な部分にまで大きな変動がもたらされた。この研究は,そのような語彙の中でも特に学術分野の専門用語の一般化の過程をとりあげ,現代の各種基本語彙表や,明治から現代までの雑誌・新聞・テレビなど各種メディアにおける変遷を主に計量的手法によって明らかにしようと試みたものである。その結果,一部の専門用語は基本語彙表や現代メディアの比較的高頻度の階級に見られるなど,現代日本語の中核の部分に深く浸透していることがわかった。このような学術漢語の一般化の現象は特に雑誌などでは,明治初期から急激に進行し,1900年前後には現代の様相の基礎が既に形成されていたと推定される。