著者
宮 香織 渡邉 英明 有地 あかね 菅 かほり 石川 聖華 門前 志歩 河村 真紀子 許山 浩司 依光 毅 矢内原 敦 河村 寿宏
出版者
JAPANESE SOCIETY OF OVA RESEARCH
雑誌
Journal of Mammalian Ova Research (ISSN:13417738)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.135-141, 2007 (Released:2007-12-06)
参考文献数
63

体外受精胚移植(IVF-ET:in vitro fertilization embryo transfer)に代表されるART(assisted reproductive technology)の歴史は1978年から始まり約30年の間に目覚しく進歩してきた.現在では体外受精で誕生した子が親になる世代である.ARTの遺伝的安全性の検証は極めて重要であり,ART実施者は出生児のフォローアップも行うことが義務とも言える.しかし,本邦においては,体外受精によって妊娠・誕生した児についてのその後の詳細な追跡調査は多くはない.この総説では体外受精(conventional IVF)と顕微授精(ICSI:intracytoplasmic sperm injection)によって妊娠・誕生した児についての先天異常について自験例を紹介するとともに,文献的に考察を行いたい.先天異常の発生頻度は,自然妊娠とARTによる妊娠の間で統計学的有意差はないとする論文もあるが,先天異常の増加を指摘する論文があるのも事実であるため,治療を開始する際にはそのような情報を正しく患者に説明することが大切であろう.また,最近では生殖医療分野に遺伝学的要素も加わり複雑化しているが,治療を行う側はこれらの知識も必要不可欠である.