著者
矢島 博文
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.63, no.5, pp.228-231, 2015-05-20 (Released:2017-06-16)
被引用文献数
1

「ヨウ素デンプン反応の発色のしくみ」は長い間の謎であった。この謎を解くには,分光法と電子論的解析が欠かせない。すなわち,「なぜ青く呈色するか?」は裏を返せば,「なぜ赤い光を吸収するか?」の電子論的選択則の解明が必須である。「ヨウ素デンプン反応」の主要因はデンプンの直鎖状成分であるアミロースであり,この「アミロース・ヨウ素錯体」に対する物理化学的特性を究明した結果,「錯体の色は,左巻きアミロースらせん糖類中のピラノース環およびグルコシド結合酸素とヨウ素の間での電荷移動およびCH-π相互作用に由来して,結合ヨウ素種I_3^-,I_2各々が折れ曲がり/ねじれ(bent/torque)構造を取り,全体として左巻き配列を取りながらアミロースに内包された発色ヨウ素種I_3^-dimer(I_6^<2->)およびI_3^-・I_2(I_5^-)の励起子間相互作用(exciton-coupling)に起因する」と結論された。口絵11ページ参照。2