著者
矢島 敏司 庄子 卓 巽 広輔
出版者
The Japan Society for Analytical Chemistry
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.70, no.9, pp.529-533, 2021-09-05 (Released:2021-11-15)
参考文献数
13

異なる置換基をもつ8種類の水溶性アズレンについて,ニトロベンゼン|水界面におけるイオン移動ボルタンメトリーを行った.その結果,すべての水溶性アズレンにおいて1価アニオンの可逆な移動波が観測され,それぞれの標準移動電位が決定できた.得られた標準移動電位から溶媒間移行標準ギブズエネルギーを算出し,水溶性アズレンの疎水性の評価を行った.また溶媒間移行標準ギブズエネルギーと薬理活性パラメータ(抗潰瘍係数)との相関について検討したところ,おおむね疎水性の高いものが高い活性を示す一方,最も疎水性の高いものが最も低い活性を示す,という逆の関係も見いだされた.これは,疎水性が高いほど生体膜を通過しやすくなるので活性が上がるが,ある程度以上疎水性が高くなると水への溶解度が落ちる,もしくは生体膜へ蓄積されることにより患部へ運ばれにくくなるためと考えられる.