- 著者
-
巽 広輔
- 出版者
- 公益社団法人 日本分析化学会
- 雑誌
- 分析化学 (ISSN:05251931)
- 巻号頁・発行日
- vol.66, no.1, pp.19-25, 2017-01-05 (Released:2017-02-04)
- 参考文献数
- 21
- 被引用文献数
-
1
グラファイト粉末と低粘度流動パラフィン等のバインダー液体を混合して調製した液状炭素を電極として用い,ポーラログラフィーを行った.液状炭素はシリンジポンプにより送液し,炭素滴をキャピラリーの先端から水溶液中へ吐出させた.これを作用電極とし,フェロセンカルボン酸(FcCOO−)についてポーラログラフィーを行った結果,明瞭な限界電流をもつFcCOO−の1電子酸化波が観察された.対数プロット解析を行うと,炭素滴が小さいときほどオーム降下の影響が小さくなり,傾きが可逆波の理論値に近づいた.限界電流値の濃度依存性からIlkovic式に基づいて求められたFcCOO−の拡散係数は,白金ディスク電極でのサイクリックボルタンメトリーから求められたそれとほぼ同程度であり,Ilkovic式が炭素滴電極にも近似的に適用可能であることが示された.正側及び負側の電位窓,ならびにゼロ電荷電位についても検討した.