著者
加藤 勝行 矢嶋 亜弓 前田 悠紀人 永島 知明
出版者
JAPANESE PHYSICAL THERAPY ASSOCIATION
雑誌
日本理学療法学術大会
巻号頁・発行日
vol.2008, pp.C3P2401-C3P2401, 2009

【はじめに】<BR>ヨセミテ国立公園エルキャピタン壁(以後EL)は、地上からの高さ630mを誇る大自然の中にある世界最大の一枚壁で知られ観光名所にも成っている.その世界最大の壁の最速登攀記録樹立への日本アスリートに対するコンディショニング・ケアとしてPT介入を得られたので報告すると共に、国体競技として枠に入った事もあり、今後フリークライマーに介入される理学療法士の方々へ日本A代表選手らの競技大会の人口壁だけはなく、自然壁へ挑む実践的介入プログラムが伝えられればと思う.<BR>【対象】<BR>主登攀はフリークライミング元年間世界チャンピョン2回を獲得している日本人男性38歳と副登攀は元アメリカ選手権年間チャンピヨンのアメリカ人男性42歳の2名.<BR>【方法】<BR>ヨセミテ国立公園EL・ノーズ巨壁へのフリークラミングによる世界最速スピードアッセントへのコンディショニング・ケアとして、活動筋への意識を持たせる事とピリオダイゼイションを考え週2で1時間~2時間を当て、理学療法トレーニングとPNF法・マニュアルセラピー(メイトランド&パリス)を主にコンディショニング・ケアとして試みた.<BR>【結果】<BR>2人の奪還スピードタイムの結果は2時間37分05秒で登攀し世界最速登攀記録を樹立した.このタイムは2007年ドイツチームの記録を昨年の記録更新よりも6分40秒という記録は、ELを知る世界のクライマーや登山家から10年間は破られない途方もない記録と絶賛された.<BR>【まとめ】<BR>今回の記録奪還に際し、最終アタックを前に主登攀者が20メートル滑落するという周囲が凍りつくハプニングも起ったが、対処法を十分に準備した結果と運が幸いし2週間の足首の軽症で済んだ.その結果世界記録を得られたことは、2007年に2002年の日米混合の同者の2名による記録を5年振りにドイツ人チームによる記録更新(2分)への記録奪還登攀である.今回のPT介入は日本人クライマーへの1年間とアメリカ人への3ヶ月間のメールによるアドバイスと帯同時で行なった.W-Cupや国体の人口壁競技大会と異なり自然壁の問題として気候(気温変動・風速度・壁からの人体への熱放散や熱吸収)等、高度差による視覚的影響による反射・反応・バランス能力低下、全身への感覚低下、筋緊張亢進による運動能力低下が予想された.さらに600メートルを超える高度からの死への恐怖感による影響も考えられ、これら諸要因等の理解得て年間自主トレプログラム、普段からの登攀での注意点および理解が得られたことと、選手強化をする場合、おおかた筋力強化を主眼としやすいが、全身の骨・筋およびバランス反応能力も問われる為トータル視野による介入の必要性があると思われた.