著者
矢根 真二
出版者
桃山学院大学
雑誌
桃山学院大学総合研究所紀要 (ISSN:1346048X)
巻号頁・発行日
vol.42, no.2, pp.23-40, 2016-12-05

本稿の目的は, 日本の上水道料金の大きな格差という視点から, 道州制レベルへの事業地域範囲の拡大という抜本的な改革の重要性を提起することである。その主要な根拠は, 「市町村原則の罪」と「政治的な価格決定」という2つの仮説的な見方である。すなわち, 地域固有の経済的合理性よりも水道供給責任を各市町村に課す原則を優先させたために, 高費用な零細事業者を作り出したことと, その結果としての費用格差の拡大が原価を賄えない政治的な価格決定を過半の事業者に蔓延させたことである。この2つの見方を経験的に裏付けることによって, 価格格差以上に著しい費用格差のある現状理解が容易になると同時に, この問題解消の難しさも明らかになる。そこで最後に, 平等面でも財政面でもいっそう魅力的に映る道州制レベルで試算された価格表を提示する。