著者
矢萩 一樹 宮崎 浩一
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.46, no.SIG10(TOM12), pp.158-171, 2005-06-15

オプションの市場価格が理論価格より割高である場合には,オプションを売却してデルタヘッジを行えば理論上は確実に収益があがるはずであるが,実際には損失が発生することがある.本研究では,そのメカニズムを解明するために,デルタヘッジの効率性に着目したシミュレーションモデルを提案した後,実データに基づいて本モデルを利用した検証を行う.デルタヘッジを行う際に使用するデルタの算出には,実現したボラティリティ,各時点のインプライド・ボラティリティ,GARCH ボラティリティの3 種類を用いることで,これらのボラティリティがデルタヘッジに与える効率性の違いを比較した.また,分析をより現実的なものとするため,デルタヘッジにおける株式の売買コストを考慮したうえで,ヘッジ頻度を変えた分析からデルタヘッジの効率性とヘッジコストとのトレードオフを確認した.実験結果から,各時点のインプライド・ボラティリティおよびGARCH ボラティリティを直接利用するだけでは,デルタヘッジの効率性はきわめて低いことが分かった.ただし,現実のボラティリティをある程度正しく予測することができたならば,取引回数を10 回程度以上行うことで理論どおりに収益をあげることができるのが確認できた.また,ヘッジコストとヘッジの効率性に関するトレードオフは存在し,ヘッジ間隔が長くなるにつれて売買コストが低下する影響が強く現れる結果となった.
著者
矢萩 一樹 宮崎 浩一
出版者
一般社団法人情報処理学会
雑誌
情報処理学会論文誌数理モデル化と応用(TOM) (ISSN:18827780)
巻号頁・発行日
vol.46, no.10, pp.158-171, 2005-06-15
被引用文献数
1

オプションの市場価格が理論価格より割高である場合には,オプションを売却してデルタヘッジを行えば理論上は確実に収益があがるはずであるが,実際には損失が発生することがある.本研究では,そのメカニズムを解明するために,デルタヘッジの効率性に着目したシミュレーションモデルを提案した後,実データに基づいて本モデルを利用した検証を行う.デルタヘッジを行う際に使用するデルタの算出には,実現したボラティリティ,各時点のインプライド・ボラティリティ,GARCH ボラティリティの3 種類を用いることで,これらのボラティリティがデルタヘッジに与える効率性の違いを比較した.また,分析をより現実的なものとするため,デルタヘッジにおける株式の売買コストを考慮したうえで,ヘッジ頻度を変えた分析からデルタヘッジの効率性とヘッジコストとのトレードオフを確認した.実験結果から,各時点のインプライド・ボラティリティおよびGARCH ボラティリティを直接利用するだけでは,デルタヘッジの効率性はきわめて低いことが分かった.ただし,現実のボラティリティをある程度正しく予測することができたならば,取引回数を10 回程度以上行うことで理論どおりに収益をあげることができるのが確認できた.また,ヘッジコストとヘッジの効率性に関するトレードオフは存在し,ヘッジ間隔が長くなるにつれて売買コストが低下する影響が強く現れる結果となった.When the market price of an option is higher than the theoretical price of it, theoretically, we can make profit with 100% certainty by selling the expensive option and activating the delta-hedging strategy. However, in reality, we sometimes lose in the option trade. In this research, we clarify why such a counter intuitive situation occurs based on our simulation model focusing on the efficiency in the delta hedging. We examine the hedging efficiency depending on the delta in the delta-hedging by utilizing the three kind of volatilities such as actual volatility in the period, implied volatility in each delta-hedging timing and GARCH volatility. Making our analysis to be more realistic, we introduce the trading cost of the underlying equity in the delta-hedging and examine the trade-off between the hedging cost and the hedging efficiency by comparing the results in the different hedging frequencies. The results indicate that the performances of the delta-hedging based on the delta derived by the implied volatility in each delta-hedging timing and the GARCH volatility are very poor. However, when we can foretell the actual volatility of the underlying equity in the hedging period with reasonable precision, as the theory indicates, we can almost surely make profit by activating the same kind of the trade independently more than 10 times. Regarding as the trade-off between the hedging cost and the hedging efficiency, we found that the effect of the hedging cost surpasses that of the hedging efficiency when the hedging frequency decreases.