著者
矢萩 裕一
出版者
日本緩和医療学会
雑誌
Palliative Care Research (ISSN:18805302)
巻号頁・発行日
vol.15, no.3, pp.227-231, 2020 (Released:2020-08-07)
参考文献数
17

【緒言】リンパ系腫瘍では,ステロイド治療は症状緩和に加えて抗腫瘍効果も期待できる.生命予後3週間以下と見込まれた終末期リンパ系腫瘍症例ながら,ステロイドの緩和治療効果と抗腫瘍効果により,在宅療養・通院治療が可能となった2症例を報告する.【症例1】55歳女性.腸管症関連T細胞リンパ腫の患者.再発時に高ビリルビン血症とPS悪化を認めた.症状緩和目的のステロイド治療はそれのみならず抗腫瘍効果も発揮し,3カ月間の在宅療養が可能となった.【症例2】63歳男性.ATLL急性型の患者.VCAP療法を中心に化学療法を施行したが,再発再燃を繰り返したため,症状緩和目的でステロイド治療を行った.ステロイドは抗腫瘍効果も発揮し,8カ月にわたる在宅療養が可能となった.【結語】終末期リンパ系腫瘍患者において,ステロイド治療は症状緩和と抗腫瘍効果の両方を視野に入れた,強力な選択肢になり得ると考えられた.