著者
矢野 佳子 平林 邦昭 木野 茂生
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.45, no.6, pp.807-816, 2020 (Released:2021-12-31)
参考文献数
41

症例は71歳女性.遷延する発熱と体重減少を主訴に近医受診.腹部超音波にて右腹部に腫瘤を指摘され,当院紹介受診となった.来院時,37℃台の発熱とCRPの上昇を認めたが,腹部症状の訴えはなかった.腹部CTにて上行結腸に7cm大の造影効果を伴う腫瘤を認めた.大腸内視鏡検査では,上行結腸に巨大な粘膜下腫瘍を認め,生検を施行するも質的診断は困難であった.抗生剤にても解熱せず,他に感染のfocusは認めず,右半結腸切除術を施行した.術後はすみやかに解熱し,炎症反応は正常化した.病理検査では,炎症性筋線維芽細胞性腫瘍(Inflammatory myofibroblastic tumor:IMT)と診断した.IMTは筋線維芽細胞の増殖と炎症細胞の浸潤が著明な腫瘍で,肺が好発部位であるが大腸原発は稀である.今回われわれは,上行結腸のIMTを経験したので,自験例も含め本邦ならびに海外報告例54例を検討した.
著者
矢野 佳子 近藤 三隆 甲村 稔 武鹿 良規 加藤 俊男
出版者
日本外科系連合学会
雑誌
日本外科系連合学会誌 (ISSN:03857883)
巻号頁・発行日
vol.38, no.5, pp.990-997, 2013 (Released:2014-10-31)
参考文献数
38
被引用文献数
1

症例は57歳女性.腹痛,背部痛を主訴に近医受診し,超音波検査で巨大腹部腫瘤を指摘され,当院に紹介された.腹部CTでは肝,膵,胃を圧排する23cm大の巨大な囊胞性腫瘤で,3D-CT angiographyでは左胃動脈,右胃大網動脈が腫瘍の栄養血管で,胃GISTを疑い開腹した.腫瘍は局所切除困難にて,胃全摘術を選択した.腫瘍径は23×20×12cm,重量は2,800g,内部は壊死物質と血液で満たされていた.免疫染色でc-kitとCD34が陽性で,胃GISTと診断した.術後補助化学療法を施行せず3年2カ月無再発生存中である.遺伝子解析にてエクソン11の遠位領域の挿入型変異で,比較的予後良好な稀な変異の型と考えられた.遺伝子解析は,囊胞化し巨大化した胃GISTの予後を決定する独立した危険因子になりえ,治療方針や予後の予測に重要と考えられた.本邦報告17例を集計し,文献的考察を加えて報告する.