著者
牧 俊夫 矢野 正行
出版者
公益社団法人 日本セラミックス協会
雑誌
窯業協會誌 (ISSN:00090255)
巻号頁・発行日
vol.89, no.1035, pp.585-594, 1981-11-01 (Released:2010-04-30)
参考文献数
22
被引用文献数
1 1

硫酸アルミニウムと塩化アルミニウムの水溶液及び消石灰乳液を種々の割合に混合することによって, 主にエットリンジャイト (6CaO・Al2O3・3SO3・32H2O) からなる白色のケーキを作製した. 次にそのケーキを500℃及び600℃で仮焼し, 粉砕して80-200メッシュの粒度をもつ試料を調製した. 2.9CaO・Al2O3l・4SO3または2.5CaO・Al2O3・1.2SO3の酸化物組成をもつ仮焼粉末は, 粒子強度とウランに対する捕集速度がかなり大きかった. すなわち U(VI) イオンの100ppmを主に[UO2(CO3)3]4-の形で含むアルカリ水溶液の50ml中に, それらの粉末の0.100gを2時間浸漬したとき, それらの試料は溶液中に存在するU(VI) イオンの80-100%を捕集した. 捕集したウランは60℃に保った5% NaHCO3溶液中に試料を1時間浸漬する方法で脱着させることができる.捕集前後の上記粉末のX線回折分析及び試料粉末を浸漬したときに起こる純水及び吸着液のpHの変化から, 本試料によるウランの捕集は, 試料の加水分解により生成するCa(OH)2と吸着液中の[UO2(CO3)3]4-イオンが反応して試料表面に二ウラン酸カルシウム (CaU2O7) が生成するために起こること, また脱着はCaU2O7と上記NaHCO3溶液が反応してU(VI) がもとの[UO2(CO3)3]4-イオンに戻るために起こることを明らかにした.