著者
矢野 義雄
出版者
財団法人 日本消化器病学会
雑誌
實驗消化器病學 (ISSN:21851166)
巻号頁・発行日
vol.1, no.10, pp.1005-1022, 1927-01-10 (Released:2010-03-19)
参考文献数
20

各種動物ニヨリ其ノ生物學的進化ノ階梯ニ應ジテ各種器官ノ生理的機能ニ差異アルベキハ動カス可ラザル事實ナルガ如キモ此ノ方面ニ關スル生物學的研究ノ領域ハ猶未充分ニ開拓セラレズ。且又從來諸家ノ肝臟乃至腎臟ノ色素排泄機能ニ關スル業績ハ多キモ、各其對象動物ヲ異ニシ、其成績又區々ニシテ甲論乙駁セルモ、動物ノ種類ニ應ジテ其肝臟若クハ腎臟ノ機能ニモ大ナル差異アルベキノ事實ヲ等閑ニ附セルガ爲ニ、獨斷的錯誤ニ陷リ未問題ノ核心ニ觸ル、能ハザルノ憾アリ。茲ニ於テ著者ハ此等ノ問題ヲ徹底的ニ解決スル所アラントシ、各種ノ動物ニ就テ、多數ノ色素ヲ用ヒテ其肝臟並腎臟ノ排泄機能ノ檢索ニ着手シ、先第一着手トシテ冷血動物(蛙)ト温血動物(鶏)ニ於ケル肝臟及腎臟ノ排泄機能ニ就テ比較實驗シ、兩者ノ間ニ於テ其肝臟腎臟ノ排泄機能ニ格段ノ差異優劣アルヲ明ニシ、殊ニ温血動物ニ於ケル肝臟ノ排泄機能ガ冷血動物ノ夫レニ比シテ甚シク旺盛ナルノ事實ヲ確認セリ。(自抄)