著者
久保 満佐子 小林 美珠 石井 利夫
出版者
日本緑化工学会
雑誌
日本緑化工学会誌 (ISSN:09167439)
巻号頁・発行日
vol.42, no.4, pp.533-542, 2016 (Released:2017-09-01)
参考文献数
33

山地帯の半自然草原における植物の開花数を維持するための管理方法を検討することを目的として,異なる管理による植物の開花数と群落構造の違いを 2006年から 2013年まで調べた。管理方法は草刈り後に刈った草を放置する方法 (草刈り) ,刈った草を持ち出す方法 (持ち出し) ,土壌を掻き起す方法 (掻き起し) とし,それらに 1年毎と 2年毎,3年毎の管理頻度と無処理を加えた。開花数および開花種数はいずれの管理方法も無処理より多く,1年毎の持ち出しと掻き起しで 5・6月の開花数が多かった。植被率と群落高は 1年毎の掻き起しでは管理開始の翌年から低くなり,持ち出しでは管理継続 6年目に群落高が低下した。2年および 3年毎ではいずれの管理方法でも,7月以降の開花数は 1年毎と同程度であった。このため,遊歩道沿いは概ね継続年数 6年を上限に毎年持ち出しの管理を行い,季節を通して開花を確保すること,その他の区域では,本研究で実施した最も省力的な管理である 3年毎の草刈りを行い,7月以降の開花を確保することで,広域的な植生管理を実施できる。ただし,3年毎の管理では,植被率や群落高が無処理と同程度に高く,長期的に開花数を維持できない可能性もある。