著者
石井 泉美 Izumi Ishii
出版者
同志社大学言語文化学会
雑誌
言語文化 = Doshisha Studies in Language and Culture (ISSN:13441418)
巻号頁・発行日
vol.9, no.2, pp.323-343, 2006-12-31

インディアン史の描き方は、どのような視点から考察するかによって、二つに大別される。一つは、白人側からの視点であり、そこでは、インディアンは欧米文化・文明の「受け手」としての役割しか与えてもらえなかった。そうした「受け身」の歴史に警告を発したのが、エスノヒストリーと呼ばれる学際的な手法である。本論文は、ネイティヴ・アメリカンの社会を彼らの視点から考察するにあたり、インディアン社会の大きな特徴である母系社会と男女の相互補完性に焦点をあてることの重要性を説いた。インディアン社会における男女の在り方、「男らしさ」や「女らしさ」、そして両者の関係性を探ることで、インディアン社会内部のダイナミズムを見る目に大きな違いがでてくるということ、またインディアン社会の内部構造を理解した時にこそ、外部の人間の手による史料を通してでさえ、等身大のインディアンが見えてくるという可能性を本稿は示唆しているのである。