著者
石井佑穂 水田宗達
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.281, 2016 (Released:2021-03-12)

【はじめに】生活環境と身体機能の変化により右坐骨部の褥瘡を繰り返した胸髄損傷者に対し褥瘡予防アプローチを行った一症例について報告する。【症例】20 代男性、H18 年に第6 胸髄損傷、外傷性くも膜下出血、右肘脱臼骨折を受傷し、対麻痺、高次脳機能障害を呈した。退院後無職であったが、その後就職し褥瘡再発を繰り返しH24 年9 月他病院で手術を受け完治せず翌年4 月に治療、シーティング目的に当センター転院。症例には口頭にて説明を行い書面で同意を得た。当センター倫理委員会にて承認を得た(H28-2)。【理学療法評価】FrankelA、ROM(R/L)肘関節伸展‐45°/0°、足関節背屈‐15°/‐15°(初期入院時0°/‐5°)。座クッションは特殊空気室構造使用。車椅子乗車姿勢は重心右偏倚、骨盤後傾、左回旋位、胸腰椎屈曲位。体圧は大腿部の接触がなく右坐骨部が高値。駆動時は左上肢リーチに右上肢を合わせるため体幹左回旋での代償と臀部の前方滑りあり。通勤は自走と電車を利用し片道60 分。【方法】背張りで腰部を支持し上部体幹伸展位で座位をとれるように調整した。クッションへの接触面積を増やすため座板での前座高調整、フットサポート高調整を行った。右上肢リーチに左上肢を合わせるように駆動方法指導を行った。体圧分布測定装置で体圧を測定し、臀部の前方滑りはシートと膝窩の距離で測定した。【結果】骨盤中間位の姿勢で座位保持ができ、体圧は大腿部の接触面積が増え坐骨部の圧が減少した。駆動時の前方滑りは調整前右1.0cm 左1.5cm、調整後左右0cm。褥瘡は治癒し退院後再発はない。【考察】退院後の生活変化により足関節背屈制限、座位姿勢の変化、屋外駆動時間の増加が起こり右坐骨部の褥瘡リスクが上昇した。適切な座位姿勢調整、体圧評価、駆動方法指導が褥瘡改善の一助となり、その後の褥瘡リスクの軽減につながったと考えられる。褥瘡予防には身体機能だけでなく生活、環境等の多面的視点が必要である。