著者
藤原菜見
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.71, 2016 (Released:2021-03-12)

【背景と目的】地域包括ケア病棟は入院日数60 日以内で在宅復帰を目指す病棟である。今回、当院における地域包括ケア病棟においても、入院時の機能から在院日数と退院時の歩行が予測可能か検討をおこなった。【方法】対象は、処方の出た患者28 名。平均年齢79.12(±12.1)歳。在院日数に対しては、1 年齢2 大腿四頭筋筋力3 握力4 上腕周径5 上腕皮下脂肪厚6MMSE7Functional Ambulation Categories(以下:FAC) の7 項目で検討を行った。退院時歩行状態はFAC を用いて、上記1~7 の項目で検討を行った。統計学的解析はJSTAT による変数減少法を用いた重回帰分析を行った。【結果】在院日数について得られた変数は1.2.4.6 であった。しかし、有意水準5%で重回帰式は有意と言えず、R2 は0.23 であった。そのため、今回の項目から在院日数を予測することは困難であった。退院時FAC については、得られた変数は3.6 であり、それぞれ偏回帰係数は0.17 と0.12、標準偏回帰係数は0.64 と0.34 であった。有意水準1%で重回帰式の検定は有意であり、R2 は0.61 であった。【考察】地域包括ケア病棟で入院時の機能から在院日数と歩行自立度の予測が可能か検討を行った。在院日数は、退院に関わる要因として社会的背景などの影響が大きく関わるため、伊藤らが回復期病棟でおこなった検証結果と同様、機能面から予測することはできなかった。一方、退院時の歩行能力については、握力とMMSE で予測可能という結果になった。握力は、全身の筋力を表わしており、入院時から筋力があるものが歩行は自立しやすいと考えられる。また、MMSE は、認知機能のスクリーニング検査であり、認知機能が低下すると、意欲低下や注意・判断能力の低下等の症状が出現し、転倒のリスクにつながる。そのため、歩行自立度に影響を与えたと考えられる。今回、在院日数の予測は困難であったが、今後は社会的背景やFIM 等のADL 評価も含めて、今後も検討をおこなっていきたい。
著者
岩田一輝 武井圭一 森本貴之 山本満
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.50, 2016 (Released:2021-03-12)

【目的】歩数を用いた身体活動(PA)量を継続する自信(SECPA)の評価法を開発し、その信頼性と妥当性を明らかにすることである。【方法】当院教育入院に参加した糖尿病患者30 名を対象に、退院前日にSECPA と岡らが作成したPA セルフ・エフィカシー尺度(SEPA)を評価した。SECPA は、8 日間の歩数の平均を軸に平均±2000 歩・±1000 歩の5 つの階級を設定し、「週3 日以上の頻度でその歩数を継続できる自信」を0-100%で他記式にて評価した。SEPA は、歩行や階段などのPA について時間や階数で5 つの階級を設定し、各階級を遂行できる自信を0-100%で表す評価法である。分析は、SECPA とSEPA 歩行・階段の5 階級の平均値を求め、2 群を比較した。SECPA とSEPA の5 階級平均、およびSECPA の平均歩数以上の階級とSEPA の5 階級平均について相関分析を行った。あらかじめ、健常者20 名に対してSECPA を2 週間の間隔をおいて2 回評価し、α係数と検査・再検査間の級内相関係数を求めた。本研究は、当院倫理委員会の承認を得て実施した。【結果】SECPA のα係数は0.93、級内相関係数は0.63 であった。SECPA 各階級の平均は、-2000 歩から順に95%、92%、84%、77%、68%であった。5 階級平均は、SECPA が83±16%、SEPA 歩行が59±30%、階段が69±21%であり、SECPA の方が有意に高かった。SECPA の5 階級平均および平均歩数とSEPA の間に有意な相関はなかった。SECPA の+1000 歩・+2000 歩とSEPA 歩行の間に有意な相関(r=0.37・r=0.47)を認めた。【考察】SECPA の信頼性は概ね確保されたと考えた。SECPA は、過去に達成した平均歩数を軸に対象者個々に階級設定するためSEPA より高くなったと考えた。SECPA の高階級とSEPA 歩行に関連を認めたことから、SECPA が歩行というPA を遂行する自信度を反映した評価法であると考えた。また、SECPA が実際に達成できた平均歩数に対して84%程度であったことは、今後の継続性を反映していることが示唆された。
著者
石井佑穂 水田宗達
出版者
社団法人 日本理学療法士協会関東甲信越ブロック協議会
雑誌
関東甲信越ブロック理学療法士学会 第35回関東甲信越ブロック理学療法士学会 (ISSN:09169946)
巻号頁・発行日
pp.281, 2016 (Released:2021-03-12)

【はじめに】生活環境と身体機能の変化により右坐骨部の褥瘡を繰り返した胸髄損傷者に対し褥瘡予防アプローチを行った一症例について報告する。【症例】20 代男性、H18 年に第6 胸髄損傷、外傷性くも膜下出血、右肘脱臼骨折を受傷し、対麻痺、高次脳機能障害を呈した。退院後無職であったが、その後就職し褥瘡再発を繰り返しH24 年9 月他病院で手術を受け完治せず翌年4 月に治療、シーティング目的に当センター転院。症例には口頭にて説明を行い書面で同意を得た。当センター倫理委員会にて承認を得た(H28-2)。【理学療法評価】FrankelA、ROM(R/L)肘関節伸展‐45°/0°、足関節背屈‐15°/‐15°(初期入院時0°/‐5°)。座クッションは特殊空気室構造使用。車椅子乗車姿勢は重心右偏倚、骨盤後傾、左回旋位、胸腰椎屈曲位。体圧は大腿部の接触がなく右坐骨部が高値。駆動時は左上肢リーチに右上肢を合わせるため体幹左回旋での代償と臀部の前方滑りあり。通勤は自走と電車を利用し片道60 分。【方法】背張りで腰部を支持し上部体幹伸展位で座位をとれるように調整した。クッションへの接触面積を増やすため座板での前座高調整、フットサポート高調整を行った。右上肢リーチに左上肢を合わせるように駆動方法指導を行った。体圧分布測定装置で体圧を測定し、臀部の前方滑りはシートと膝窩の距離で測定した。【結果】骨盤中間位の姿勢で座位保持ができ、体圧は大腿部の接触面積が増え坐骨部の圧が減少した。駆動時の前方滑りは調整前右1.0cm 左1.5cm、調整後左右0cm。褥瘡は治癒し退院後再発はない。【考察】退院後の生活変化により足関節背屈制限、座位姿勢の変化、屋外駆動時間の増加が起こり右坐骨部の褥瘡リスクが上昇した。適切な座位姿勢調整、体圧評価、駆動方法指導が褥瘡改善の一助となり、その後の褥瘡リスクの軽減につながったと考えられる。褥瘡予防には身体機能だけでなく生活、環境等の多面的視点が必要である。