著者
石坂 務 井上 雅彦
出版者
NPO法人 日本自閉症スペクトラム支援協会 日本自閉症スペクトラム学会
雑誌
自閉症スペクトラム研究 (ISSN:13475932)
巻号頁・発行日
vol.18, no.1, pp.5-13, 2020-09-30 (Released:2021-09-30)
参考文献数
22

本研究では、不登校状態にあった自閉症スペクトラム男児に対し、対象児が課題として有していた感覚過敏性とこだわり、暴力行為についての実態把握を行い、学校、教育委員会、警察、行政など、地域機関の支援体制を整えた。その上で、大学附属専門機関(以下、専門機関)が中心となり、行動論的アプローチを用いた登校支援を行いその効果を検討した。支援当初は男児の持つ過敏性の高さに対し、学校や家庭等周囲からの理解が得られにくく、男児は学校だけでなく外出自体に嫌悪的であった。そのため、当初の目標を学校への登校ではなく専門機関への来所行動に設定した。アプローチとして、過敏性に配慮し、調整した環境において対象児の好みに基づいてアニメやゲームの話をする等、本人の拒否が出にくい設定から来所課題を開始し、段階的に学校でも取り組める学習活動や運動を取り入れていった。また、並行して母親と面談を行い、家庭での環境調整を行うことで、暴言や暴力行為の低減をはかった。専門機関の来所行動を定着させたのち、学校と連携し登校支援を行った。連携に関しては、校内の支援チームと会議をもち、対象児の実態について引き継ぎを行い、かかわる教員、時間、学習活動を段階的に増やしていき、学校での個に応じた支援の引き継ぎと対象児の自発的な登校を定着させた。