著者
石塚 庸三 今井 久雄
出版者
一般社団法人 廃棄物資源循環学会
雑誌
廃棄物学会論文誌 (ISSN:18831648)
巻号頁・発行日
vol.3, no.1, pp.1-7, 1992-01-30 (Released:2010-05-31)
参考文献数
16

X線写真用定着廃液中の銀は, ビス (チオスルファト) 銀 (I) 酸イオンの形で溶解している。本報では, これらの廃液から銀を回収するために, 過酸化水素法, 電解法, 銅板浸漬法により, 所定条件下における析出物を得て, それらの組成形態について比較検討した。析出物は, 過酸化水素法, 電解法では硫化銀, 銅板浸漬法では銀単体と微量の酸化銅 (I) として同定された。過酸化水素法では, 廃液中に存在するS2O32-および [Ag (S2O3) 2] 3-量に与える過酸化水素の添加量の影響を, それぞれの析出物の組成形態 (Ag/S: モル比) をもとに検討した。理論量の過酸化水素を添加して生成する析出物には, 廃液中の銀がほぼ完全に含まれ, 回収されることが見い出された。硫化銀を直接水素処理 (300~700℃, 3h) しても銀単体は得られない。硫化銀を, 硝酸溶液 (1: 1) ついで塩化ナトリウム溶液で処理をして得られた塩化銀からは, その融点 (455℃) 付近で水素処理 (400℃, 3h) すると, ほぼ純粋な銀の単体が回収された。