著者
石塚 正也 高田 哲司
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.56, no.9, pp.1877-1888, 2015-09-15

携帯端末で個人認証を行う利用者にとって覗き見攻撃は現実的な脅威の1つである.この脅威に対する既存の対策方法は,入力操作や画面を隠すというほかにいくつかの提案がなされているが,それらの提案手法には入力手法の複雑化や学習負荷,秘密情報の増加にともなう記憶負担の増大,専用デバイスが別途必要などの問題がある.これに対して本論文では,現時点において入手可能なスマートフォンで暗証番号認証を行うことを想定し,スマートフォンの振動機能を応用することで覗き見攻撃への安全性を向上させうる暗証番号入力手法CCC(Circle Chameleon Cursor)を考案した.振動機能の利用により,CCCは視覚的情報による秘密情報の特定を困難にしつつ,認証操作時における認証端末と利用者間での秘密情報共有を可能にする.またその共有秘密を既存のダイヤルによる暗証番号入力操作に応用することにより,最小限の学習負担と記憶負担増加量ならびに別途専用デバイスは不要という利点を持つ入力手法となっている.このアイデアを基にAndroidスマートフォンアプリとしてプロトタイプを実装し,被験者による攻撃実験を実施した.その結果,3つの利用状況において認証操作を録画した動画記録から入力値を正しく特定できた被験者は0人という結果を得た.