著者
石崎 舜三
出版者
公益社団法人 日本化学会
雑誌
化学と教育 (ISSN:03862151)
巻号頁・発行日
vol.37, no.2, pp.151-155, 1989-04-20 (Released:2017-07-13)

偉大な自然という営みの中で, 動物や植物の生命から作り出された繊維は, 水が存在する自然の環境の中で形造られ, 約紀元前3000年も前から, 我々人類の生活に深いかかわりをもちながら現在に至っている。天然繊維は, 生まれながら親水性の繊維であり, その背景も理解できよう。一方, 疎水性の合成繊維は, 自然の営みを先生に, 人類の知恵を駆使して誕生した繊維で, 生まれてから, まだ半世紀にも満たない。合成繊維は, 水のない状態から生まれてきた秀才であるが, しかし, 水に関しては天然繊維に比して, まだほど遠い。この点でまだまだ天然繊維に学ばなければならないことも多い。吸水性も吸湿性も共に高い合成繊維を作ってみたいという課題は, 合成繊維の研究に携わる者にとって大きな目標でもあり, 夢でもある。