著者
石嶌 純男
出版者
千葉大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1993

マウスSwiss 3T3線維芽細胞を増殖刺激すると、早期に細胞内遊離Mg^<2+>濃度が上昇する。このMg^<2+>の増加は10秒以内に起こる一過性の初期相と、大部分は細胞の外からのMg^<2+>流入による30-60分後の第2相との二相性を示す。ここでは刺激直後に起こる一過性のMg^<2+>濃度上昇に焦点を絞り、細胞内でのMg^<2+>の遊離機構を解析した。遊離Mg^<2+>濃度の測定は、蛍光色素mag-fura-2と蛍光顕微画像解析装置Argus-100を用いて単一細胞レベルで行った。刺激は主として、ボンベシン-Swiss 3T3細胞系を用いた。1.細胞内Mg^<2+>遊離機構。細胞質内Mgの90%以上は各種のリガンド、特に40%はATPと可逆的に結合して存在する。しかし刺激後2分以内にATP濃度変化はみられず、Mg^<2+>上昇はATPよるものではない。さらにボンベシンにより細胞内はアルカリ化するが、弱塩基添加により細胞内をアルカリ化してもMg^<2+>濃度はほとんど変化せず、ボンベシンによるMg^<2+>上昇にも影響を与えなかった。一方、イオノフォアの一種であるイオノマイシンを加えるとMg^<2+>上昇がみられたが、ボンベシンあるいはイオノマイシンを加え2分後に他方を加えても二度目のMg^<2+>上昇はみられなかった。これは両者が同じMgプール、おそらくは膜系よりMg^<2+>を遊離させたことをしめしている。3.細胞外Ca^<2+>の役割。外液のCa^<2+>を除くとボンベシンによるMg^<2+>上昇の程度は六十%低下し、Caチャンネルブロッカーであるニカルジピンを加えるとMg^<2+>上昇は90%阻害された。このニカルジピンによるMg^<2+>上昇の低下は、外液のCa^<2+>濃度を上げることにより部分的に回復した。以上の結果は、ボンベシンが、細胞外Ca^<2+>に依存して早期に細胞内プールからMg^<2+>を動員することを示している。