著者
張 剛太 中江 良子 石川 康子
出版者
公益社団法人 日本薬理学会
雑誌
日本薬理学雑誌 (ISSN:00155691)
巻号頁・発行日
vol.127, no.4, pp.267-272, 2006 (Released:2006-06-01)
参考文献数
40
被引用文献数
1 1

生活習慣病,老化,体液・電解質の代謝異常,薬物の副作用やシェーグレン症候群等の原因により口腔乾燥症が発症する.唾液成分の99%以上は水であり,唾液腺において水輸送は極めて重要である.水を大量に輸送する臓器では,水チャネル・アクアポリン(AQP)がその役割を果たしており,唾液腺にはAQP1,AQP3,AQP5,AQP8の存在が認められている.耳下腺のM3ムスカリン受容体やα1アドレナリン受容体が刺激を受容すると管腔膜側にてAQP5がラフトとともに細胞内移動することが,Triton X-100による可溶化実験やsucroseおよびOptiPrepによる浮揚実験さらには免疫組織化学を応用した共焦点顕微鏡や電子顕微鏡による可視化実験によっても認められた.そして,持続的唾液分泌促進薬・セビメリンはAQP5の管腔膜での持続的な増量を誘導した.本総説では,口腔乾燥症の発症機序をAQP5の細胞内移動との関連で解説するとともに,セビメリンのこの疾患に対する治療効果について病因別に概説する.