著者
伊勢 昂生 石川 慶大 臼井 葉月 横山 和之 進藤 学 平野 聡
出版者
日本臨床外科学会
雑誌
日本臨床外科学会雑誌 (ISSN:13452843)
巻号頁・発行日
vol.83, no.3, pp.503-509, 2022 (Released:2022-09-30)
参考文献数
18

患者は64歳,女性.自宅玄関で椅子から転落し右側胸部を強打した.近医で肋骨骨折が疑われ,当院を紹介受診した.胸部X線・CTで第5,6肋骨骨折を認めた.入院にて疼痛コントロールを行い,退院予定であったが,受傷の11日後に急激な右胸部痛が出現した.胸部CTで多量の胸水貯留,胸腔ドレナージで新鮮血の排液を認めたため,胸腔鏡補助下に緊急開胸手術を施行した.胸腔内には多量の凝血塊が存在し,未診断であった第7肋骨の鋭利な骨折端が胸腔内に突出し,近傍の横隔膜に損傷を認めたことから,同部が遅発性血胸の原因と考えた.血腫除去,第7肋骨を部分切除し,横隔膜を縫合後,閉胸した.術後経過は良好で,術後22日目に退院した.結論:中下位肋骨骨折時には,横隔膜損傷による遅発性血胸を合併し得ることを念頭に置いた対応が必要である.