著者
葉山 佳一 新井 一仁 石川 晴夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.59, no.5, pp.303-311, 2000-10-25
参考文献数
39
被引用文献数
1

正常咬合者の歯列弓形態には人種差や個人差が認められるが, 個人の上下顎歯列弓形態は調和していると考えられている.しかしながら, 上下顎で異なる形態的特徴を報告した研究もあり不明な点が多い.本研究の目的は, 正常咬合者の上下顎歯列弓形態に四次多項式を適合し, 各項の係数から上下顎歯列弓形態の相関関係について検討することである.資料として, 本学の学生および職員約3, 500名の中から選択した正常咬合者30名(男女各15名, 平均23.2歳)の口腔模型をもちいた.教室で考案した計測システムは, 非接触三次元形状計測装置(VMS-250R, (株)UNISN), graphic workstation (Indigo 2, Silicon Graphics Inc.), ならびに三次元CAD software (SURFACER, Imageware Inc.)から構成される.通法にしたがって口腔模型を測定し, 上下顎にそれぞれ基準平面として咬合平面を設定したあと, 各歯の切縁中央, 犬歯尖頭, ならびに臼歯では頬側咬頭頂の座標値を算出した.なお大臼歯の計測点は近遠心咬頭頂の中点とした.さらにパーソナル・コンピュータ(Think-Pad 600, IBM Co.)とデータ処理ソフトウエア(Excel 97, Microsoft, Inc.)にて, 各被験者の上下顎の計測点にそれぞれ最小自乗法を用いて四次多項式(y=ax^4+bx^3+cx^2+dx+e)を適合した.被験者30例の上下顎ごとに各項の係数(a, b, c, d, ならびにe)の平均値と標準偏差を求め, さらに各係数について上下顎間で相関係数を算出後, 統計学的な検定を行った.四次多項式における各項の係数について上下顎間で算出した相関係数は, それぞれaは0.796, bは0.546, cは0.763, dは0.621, eは0.813であった.また統計学的な検定を行った結果, すべての項の係数において上下顎間で統計学的に有意な正の相関が認められた.このことから正常咬合者の上下顎歯列弓形態は相関関係があることが明らかとなった.
著者
小林 美也子 新井 一仁 石川 晴夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.258-267, 1998
参考文献数
39
被引用文献数
11

本研究の目的は, 抜歯・非抜歯の診断や頭蓋下顎機能障害との関連において注目され, 歯科矯正診断における重要な指標のひとつであるSpeeの彎曲の深さについて三次元的に分析し, 日本人正常咬合者の咬合の形態的特徴を一層明らかにすることである.教室で開発した非接触三次元形状計測システムを用いて, 本学の学生および教職員約3, 500名の中から選択した正常咬合者30名(男女各15名, 平均年齢23.2歳, 標準偏差3.5歳)の矯正用診断模型について計測を行った.水平基準平面は切歯点と左右側の第一および第二大臼歯の遠心頬側咬頭頂を通過する咬合平面とし, 両咬合平面に対する切縁中央と咬頭頂の垂直的な距離をSpeeの彎曲の深さおよびSpeeの彎曲に最も適合した球を算出し, 平均値と標準偏差を求めた.Speeの彎曲が最も深かったのは第二大臼歯を後方基準点とした基準平面に対する第一大臼歯の近心頬側咬頭頂で平均1.28mm, 標準偏差0.60mmであった.また球の半径は72.4mmから3498.9mmの範囲, 中央値は158.2mmであった.以上のことから, 本研究で選択した日本人正常咬合者のSpeeの彎曲の深さは, 以前の報告よりも平坦であること, Speeの彎曲は第二大臼歯で個人差が最も大きいこと, 左右側差は認められないこと, 第二大臼歯近心頬側咬頭頂においては, 女性は男性に比較して統計学的に有意に深いこと(p<0.01), ならびにSpeeの彎曲に最も適合した球の半径には大きい個人差が認められることなどの特徴が明らかとなった.