著者
平出,隆俊
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, 1997-10

尿中GHの測定が歯科矯正臨床における新しい成長発育の評価指標となり得るか否かをを年間身長増加量, 下顎骨増加量, 尿中GHの測定値を用いて検討した.資料は初診時8歳2カ月∿19歳7カ月の女性30名, ANB+1.0∿-2.5度の骨格性III級症例とした.結果 : 1. GHは8歳3.7(±3.00)pg/mg, 11歳で最大22.0(±8.49)pg/mgを示し以後16歳9.9(±3.81)pg/mgまで徐々に減少した.それ以後は10pg/mg前後の値で安定していた.2. 身長は9歳5.5(±1.05)cm/y, 10歳で最大8.9(±6.15)cm/yを示しその後徐々に減少した.3. 下顎骨は9歳10.1(±2.00)mm/y, 10歳で最大10.6(±5.83)mm/yその後徐々に減少がみられた.4. 身長と下顎骨のピークは10歳, 1年遅れでGHのピークがみられたが変化様相は相互に類似傾向がみられた.5. 身長と下顎骨, GHと下顎骨, GHと身長の相関はそれぞれ+0.80, +0.59, +0.48でいずれも有意の相関を示した.以上のことからGH測定は下顎骨の成長評価指標としての精度は劣るものの成長発育能を評価し得る指標となる可能性が示唆された.
著者
高野 安紀子 鬼久保 平 会田 泰明 清村 多 山口 賢 林 弘明 武山 治雄 清村 寛
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.353-359, 1999
参考文献数
15
被引用文献数
14

明海大学病院(旧城西歯科大学病院)矯正歯科において, 1989年8月から1995年8月にかけて来院した患者について統計学的分類を行い, 本院における以前の調査報告と比較し以下の結果を得た.1. 年度別新来患者数では, 大きな変動はみられず, 年間平均307.8人が来院していた.2. 初診月分類では, 7月, 8月の夏休みの時期に26.0%が, 3月, 4月の春休み前後の時期に20.9%が来院していた.3. 性別分類では, 男性 : 女性が1 : 1.8と女性患者が多かった.4. 年齢別分類では, 7∿12歳の患者で61.0%を占めていた.また, 成人患者が2割を超えて増加(26.7%)し, 特に女性の成人患者が増え, 女性患者全体の32.5%で, 成人男女比は1 : 2.5であった.5. 居住地域別分類では, 近隣の市町村からの来院が多く, そのほとんどは当院を中心として半径20km以内で, 全体の77.0%を占めていた.6. 主訴別分類では, 乱杭歯が最も多く, 次いで受け口, 出っ歯, 噛み合わせが悪い, その他, 歯が生えない, 検診で言われた, 顎が痛いの順であった.その他の項目も多く, 患者の訴えの多様化が示された.7. 現在の歯並びに気付いた時期としては, 「乳歯が抜けて生え変わるとき」が圧倒的に多く, 「全部永久歯にはえかわってから」, 「だんだん悪くなりました」, 「乳歯の時」, 「他人から言われて気が付きました」, 「急に悪くなりました」の順であった.8. Hellman's developmental stage分類ではIVA, IIIBが多く次いでIIIC, IIIA, IVC, VA, IIC, IIA, Iの順であった.9. 初診時に保険が適用となった患者数は, 全体の6.5%であった.10. 1998年4月現在の治療経過では, 保定終了, 保定観察中, 動的治療中がほぼ同率で, 次に中断, 経過観察中, 転医の順であった.
著者
宮崎 晴代 茂木 悦子 斉藤 千秋 原崎 守弘 一色 泰成 鈴木 伸宏 関口 基 湯浅 太郎
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.118-125, 2001-04-25
参考文献数
35
被引用文献数
11

本研究の目的は, 多数の歯を維持する日本人高齢者を対象として, その咬合および顎顔面形態を明らかにすることである.千葉市では毎年, 8020達成者を募集し千葉市主催の長生き良い歯のコンクールで表彰している.今回は平成10, 11年度の応募者41名に対し, アンケート調査および口腔内診査を実施し, その際口腔内及び顔面写真撮影, X線写真撮影, 印象採得を行い資料とした.応募者の平均年齢は82歳5カ月で, 平均現在歯数は25.3歯であった.年齢および現在歯数に男女差はなかった.咬合関係は, 前後的には上顎前突が78.9%, 正常が21.1%, 反対咬合は0%だった.垂直的には過蓋咬合が34.2%, 正常が65.8%, 開咬は0%だった.犬歯部アングル分はClass I (64.6%)とClass II (25.0%)が大半を占めた.叢生については, 上顎前歯部の叢生を有するものは4.9%と少なかった.下顎前歯部は31.7%に叢生を認めたが著しい叢生ではなかった.顎顔面形態については下顎骨が後下方回転し, やや上顎前突傾向を示した.以上により日本人8020達成者は比較的良好な咬合および顎顔面形態を有することがわかった.
著者
花見 重幸 斉藤 功 花田 晃治 高野 吉郎
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.3, pp.211-222, 1996-06
参考文献数
52
被引用文献数
5

矯正力が三叉神経節カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)陽性ニューロンに対して, どのような影響を及ぼすかを明らかにすることを目的として, ラット上顎臼歯をWaldoの方法に準じて実験的に移動させ, 移動開始1, 3, 6, 12, 24時間後に屠殺して, 三叉神経節神経細胞体内CGRPの免疫活性と局在性について免疫組織化学的に検索し, 以下の結果を得た.1. 対照群において, 上顎臼歯部支配領域における全神経細胞体に占めるCGRP陽性神経細胞体の割合は約37%であり, 小型および中型の細胞体がそのほとんどを占めていた.また, 細胞体直径の小さなものほどCGRP免疫染色性が強くなる傾向にあった.2. CGRP陽性神経細胞体は, 歯の移動開始後すみやかにその数を減じ, 3時間後に最少となったが, 以後増加傾向を示し, 移動開始12時間後には対照群とほぼ同等の状態にまで回復していた.また, 全CGRP陽性神経細胞体に占めるCGRP強陽性細胞体の割合は, 歯の移動後3時間において顕著な減少を示した.以上のことから, 歯の移動により一時的に三叉神経節神経細胞体内のCGRPが減少傾向を示すことが明らかとなり, 三叉神経節内神経細胞体内に存在するCGRPが, 歯の移動に伴う疼痛の発現とともに, 歯の移動初期における歯周組織内での組織改変に深く関与している可能性が示唆された.
著者
佐藤 亨至 三谷 英夫 メヒア マルコ A 伊藤 正敏
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.300-310, 1996-08
被引用文献数
8

咀嚼と脳賦活との関わりについての基礎的検討として, 若年者を対象として個体が示す顎顔面骨格構成および咬合形態によって, 咀嚼時の脳血流動態に差異が存在するかどうかについて調べるため, 酸素標識の水とポジトロンCT(PET)を用いて検討を行った.研究対象は, 21∿32歳の健常ボランティア男性6名である.それぞれ頭部X線規格写真の撮影と歯列模型の採得を行い, 顎顔面骨格構成および咬合について検討した.脳血流動態については安静時とガムベース咀嚼時にPETを用いて測定を行った.得られた脳血流画像について関心領域を設定し, ガム咀嚼に伴う局所脳血流(rCBF)の変化を求めて咬合や顔面形態との関連について検討した.その結果, ガム咀嚼による脳血流変化には個体差が大きいものの, 上・下顎骨に調和のとれたおおむね良好な咬合を有する者では, 1次運動感覚領下部(ローランド野), 島, 小脳半球などで明らかな脳血流の増大が認められた.一方, 顎顔面骨格や咬合に種々の問題を有する不正咬合者では咀嚼による脳血流変化が正常咬合者と異なる傾向が認められ, 1次運動感覚領下部や島での明らかな賦活は認められない者もいた.以上のことから, 咀嚼による脳の賦活化部位とその量は個体間でかなり変異に富んでおり, それには個体の示す顎顔面骨格構成および咬合とそれに関わる咀嚼運動様式が関与している可能性が示唆された.
著者
岩崎 万喜子 山本 照子 永田 裕保 山城 隆 三間 雄司 高田 健治 作田 守
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.53, no.6, pp.696-703, 1994-12
被引用文献数
29

近年, 成人の矯正歯科治療患者が増加している.そのような最近の動向を把握するために, 1981年4月から1993年3月までの12年間に大阪大学歯学部附属病院矯正科で治療を開始した18歳以上の成人患者について実態調査を行った.1. 調査を行った12年間で, 治療を開始した患者数は口唇裂口蓋裂を除くと総計4, 040人で, そのうち成人患者は793人(19.6%)であった.成人患者数は1990-1992年に増加していた.男女比(男性を1とする)は1 : 2.1で, 12年間を通じて変化はみられなかった.2. 年齢分布では, 男女とも20-24歳が最も多かった.経年的には男女とも20歳代の増加がみられ, 25-29歳の女性の比率が1990-1992年に増加していた.3. 距離別の居住地域は, 1983年度に附属病院が大阪市から吹田市に移転したため, 近距離からの通院が増加していた.4. 外科的矯正患者は1990年度に保険適用されて以来増加した.5. 各種不正咬合の分布状態は, 男女とも叢生が最も多く(28.4%), 経年的に増加傾向を示した.6. 顎関節症を伴う成人患者は23.1%に認められ, 経年的に増加傾向を示した.男女比は1 : 2.9であった.
著者
太田,佳代子
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌
巻号頁・発行日
vol.54, no.2, 1995-04

全身性の筋力低下と, 頭蓋顔面領域の臨床症状として細長い顔貌, 開かれた口唇, 高口蓋などがみられる先天性非進行性ミオパチー患者の歯科矯正治療を行う機会を得たので, 顎顔面形態と咬合の特徴, および矯正治療に伴う変化と治療結果の安定性について検討した.1. 上下顎骨の前後的大きさは標準的であったが, 垂直的大きさ特に前下顔面高が過大であり, 下顎下縁平面角が大きかった.また, 頭蓋の幅径はほぼ標準的な大きさを呈していたが, 上顎歯槽基底部や下顎角部の幅径は小さい傾向にあった.2. 口蓋は深く(高口蓋), 前歯部は開咬を呈していた.これらは, 前下顔面高が過大で下顎下縁平面角が大きいことによる骨格性開咬と, 上下顎間距離の増大を補償するための上下顎歯槽部の大きな成長によるものと考えられた.3. 矯正治療中の変化として, vertical chin cap装着中は下顎下縁平面角の減少を伴い上下顎の成長は前方成長が優位で下方成長は抑制されていた.一方, chin cap中止後は上下顎の成長は下方成分が優位となり下顎下縁平面角の増加を伴っていた.4. 矯正治療後の咬合の悪化の原因は, 顎顔面の成長による上下顎間距離の増大と考えられた.これらの顎顔面形態と咬合の特徴および治療中, 治療後の変化は, 顔面筋の筋力低下が原因と考えられた.
著者
渡辺 厚 毛利 環 渡邉 直子 渡邉 洋平 宮崎 秀夫 齋藤 功
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.68, no.3, pp.142-154, 2009-10-25
参考文献数
43
被引用文献数
2

わが国の不正咬合の疫学調査は独自の基準によるものが散見されるのみで,国際的に比較可能なIndex of Orthodontic Treatment Need(IOTN)を用いた疫学調査はほとんどない.そこで今回,日本人における不正咬合の種類と程度および矯正治療の必要性に関する基礎データの構築を目的に,IOTNを用いた疫学調査を行った.調査対象は,4つの地域の11歳から14歳児,497名としたが,矯正治療経験のある72名(14.5%)は除外した.調査は,レントゲン,研究用模型を利用せず口腔内診査法によりIOTNを算出した.機能と形態の両面から咬合を評価するDHCにおいて「矯正治療必要性あり」(DHC Grade 4,5)と判定された者は34.1%であった.不正咬合の内訳は,叢生17.4%,過度のoverjet 10.1%,萌出余地不足13.2%,永久歯欠損4.0%,過蓋咬合2.6%,交叉咬合2.4%,開咬0%,反対咬合0%であった.一方,客観的審美性の観点から咬合を評価するACにて「矯正治療必要性あり」(AC Grade 8-10)に分類された者は10.4%であった.これらの結果を総合すると,「矯正治療必要性あり」と分類された者は35.5%であった.以上の結果をこれまでの報告と比較すると,矯正治療が必要とされる者の割合は英国の調査結果とほぼ近似していたが,不正咬合の種類としては叢生が約2倍で,不正咬合の特徴は欧州と異なる可能性が示唆された.
著者
楠元 桂子 佐藤 亨至 三谷 英夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.55, no.4, pp.311-321, 1996-08
参考文献数
23
被引用文献数
19

顎整形装置の顎骨成長に対する効果を評価する方法として側面頭部X線規格写真による重ね合わせや線・角度計測値の比較等が一般的に用いられているが.成長変化の様相を詳細に評価することは難しい.そこで, 本研究では上・下顎骨各部の変化を客観的かつ視覚的に評価するため, 上・下顎骨各部の標準成長および成長速度曲線を作成した.次に, 上顎後方牽引装置(ヘッドギアー)および下顎後方牽引装置(チンキャップ)の顎骨成長に対する影響について評価を行った.結果は以下の通りであった.1. 9∿17歳に至る女子の上顎骨前後径(A'-Ptm'), 下顎骨全体長(Cd-Gn), 下顎枝高(Cd-Go)および下顎骨体長(Go-Pog')の標準成長曲線および成長速度曲線が作成された.2. ヘッドギアー群では, 上顎骨前後径のSDスコアは装置適用中は減少し, その後増加する傾向を示したが, 標準曲線と有意差は認められなかった.3. チンキャップ群では, 下顎骨各部の成長速度は装置適用中有意に低下したが, その後成長は加速され, 適用前と成長終了時のSDスコアに差は認められなかった.成長のピークは平均より約1年遅くなった.以上のことから, 顎整形装置は顎骨の成長様相に影響を与えることが示唆された.本研究で作成した上・下顎骨の標準成長曲線および成長速度曲線は顎整形装置の効果の評価法として有効であると考えられた.
著者
小山 勲男 宮脇 正一 山本 照子
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.60, no.5, pp.313-318, 2001
被引用文献数
7 1

エッジワイズ治療を行った4症例において, チタンスクリューを大臼歯部あるいは小臼歯部に埋入して不動固定として用いた結果, 有用であることを確認したので報告する.チタンスクリューは歯肉切開を行わずに埋入された.埋入時や撤去時において, 痛みや出血はほとんど認められなかった.本報告で提示した4症例の治療経過から, 歯科矯正臨床においてチタンスクリューを用いた治療は, 患者に対する負担が軽く, 従来の矯正治療のメカニクスでは困難であった臼歯の遠心移動, 臼歯の圧下ならびにレベリングを行いながらの前歯牽引を患者の協力をほとんど得ることなく安全かつ確実に行えることが示唆された.
著者
藤井 智巳 菅原 準二 桑原 聡 萬代 弘毅 三谷 英夫 川村 仁
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.227-233, 1995-08
被引用文献数
15

外科的矯正治療が反対咬合者の顎口腔機能, 特に咀嚼リズムに及ぼす長期的効果について横断的に評価した.研究対象は, 初診時に外科的矯正治療を要する反対咬合者と診断され, 治療後5年以上経過した28症例(術後群)である.対照群として, 未治療反対咬合者23例(術前群)と正常咬合者22例(正常咬合群)を用いた.なお術後群については手術法による差異を知るために, 下顎単独移動術を適用した13例(One-Jaw群)と, 上・下顎同時移動術を適用した15例(Two-Jaw群)とに区分した評価も行った.咀嚼リズムは下顎運動測定装置(シロナソグラフ・アナライジングシステムII)を用いて測定した.本研究の結果は以下のとおりであった.1. 術後群の開口相時間, 閉口相時間, 咬合相時間, 咀嚼周期は, いずれも術前群および正常咬合群との間に差が認められなかった.2. 術後群の咀嚼周期の変動係数は術前群と比べ小さい値を示し, より安定した咀嚼リズムを示していた.また術後群の開口相時間, 閉口相時間, 咬合相時間, 咀嚼周期の変動係数はいずれも正常咬合群との間に差が認められなかった.3. One-Jaw群とTwo-Jaw群とも咀嚼リズムはほぼ同様の値を示し, 術式や外科的侵襲の程度による差異は認められなかった.本研究の結果から, 外科的矯正治療による顎顔面形態の改善と咬合の再構成が, 長期的術後評価において, 咀嚼リズムの安定化に寄与していることが示唆された.
著者
陳 明裕
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13490303)
巻号頁・発行日
vol.67, no.2, pp.118-120, 2008-06-25

バネ式拡大装置(CEA)は,0.9mmステンレススチールラウンドワイヤーと内径0.9mmのステンレススチールチューブ,および0.3mm×0.9mmのNi-Tiオープンコイルよりなる単純な構造の装置である.また,単純な構造のため,製作も容易で,清掃性に優れ,装着感も比較的良好である.なお,本装置は,側方拡大のみならず,主線の延長によって同時に前歯部の傾斜移動も可能であり,歯列狭窄を伴う叢生症例の治療などに有効である.また,リンガルシースやSTロックと組み合わせることで,調節時の取り外しも可能となる.本稿ではその製作方法および応用例を紹介する.
著者
友近 晃 石川 博之 中村 進治
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.264-273, 1995-08
被引用文献数
14

矯正歯科治療では, 形態的および機能的に安定した咬合状態を得るため歯列歯槽部の形態および位置関係の調和を図ることが重要である.しかし, これまで歯槽部の三次元的形態および位置関係を十分把握することは非常に困難で, 限られた計測部位について分析を行っているに過ぎなかった.そこで本研究では, 歯列模型形状計測システムに反射鏡とθテーブルを導入することにより, 歯槽部を含めた歯列模型全体の三次元数値化を行った.また, バイトブロックデータを用いて上下顎データの位置合わせを行い, 計算機上で咬合状態を再現する方法を開発した.さらにこの計算機上での位置合わせの結果について, 従来より用いられているブラックシリコン法による咬合診査の結果と比較検討したところ, 本法により再現された咬合状態は, ほぼ生体における咬合状態と一致していることが確認された.これらより本システムを用いた上下顎歯列弓, 歯槽頂弓, 歯槽弓の三次元的な形態および位置関係の総合的な分析方法を確立した.つぎに臨床応用として, 両側臼歯部逆被蓋症例につき分析を行ったところ, その成因を上顎歯槽部の狭窄という形態的問題と上下歯槽部の前後的関係の不調和という位置関係の問題とに分離して把握することができた.以上のことより, 本システムを用いた不正咬合の新たな角度からの症例分析の可能性が示唆された.
著者
梅村 幸生 山口 敏雄
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.56, no.5, pp.303-312, 1997-10
被引用文献数
9 3

骨格性反対咬合(男子22名, 女子13名, 合計35名)症例の後戻りは, どの時期に, どの様な変化を生ずるのかを検討するために初診時, 動的治療終了時, 保定1年後, 保定3年後, 保定5年後の各時期に撮影した側位頭部X線規格写真を用いて評価した.1. 骨格系では, SNP, Mand. planeに変化があり, 下顎骨の前上方への変化による後戻り現象が認められた.歯系ではU1-FH, U1-SN, I.I.A, L1-Mand. plane, Overjetに変化があり, 下顎前歯の唇側傾斜, Overjetの減少の後戻り現象が認められた.2. 咬合平面は保定1年-保定3年の期間で, 口蓋平面-咬合平面において変化が認められた.しかし, SN-咬合平面, 下顎下縁-咬合平面角に対しては安定していた.以上より, 骨格性反対咬合の矯正治療の後戻り変化は, 骨格系では下顎骨の前方移動および歯系では下顎前歯の唇側傾斜であった.この結果から, 骨格性反対咬合の治療に際しては, 下顎骨の前方への成長変化に対しては, chin cap装置を治療中および保定期間においても使用が必要である.また, 下顎骨の前方成長に対して, 前歯が唇側傾斜および舌側傾斜に変化して, 下顎骨の位置変化を防止しているものと考えるので, 動的治療終了時には大きな量のoverbiteの獲得が必要であると思われる.また, 咬合平面の角度は, 本研究からSN平面に対して約13°の角度が骨格性反対咬合症例の骨格形態に適応した平面角と考える.
著者
古賀 義之 吉田 教明 三牧 尚史 小林 和英
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.5, pp.318-324, 1999
被引用文献数
4

ワイヤー装着時に歯に作用する複雑な力系に関し, 臨床的な測定法の確立が望まれる.本研究では, 2つのブラケットとその間のワイヤーのような, 線材の両端の回転が, 二次元上で拘束されるような力系について解析した.その力系の理論的な算出には, 線材の曲げ剛性と曲げモーメントの比で表されるオイラーの微分方程式を解くことにより行った.また, 得られた理論式より, 線材両端の回転が拘束される複雑な力系と, 一端だけが拘束される単純な力系を比較することにより, 臨床上有効な矯正力の計測について検討した.その結果, 以下の結論が得られた.1. ブラケット等に加わるモーメントおよび力は, 線材が直線の場合, ブラケットの傾斜角の関数として表すことができる.モーメントに対するブラケットの傾斜角の影響は, 同側の傾斜角が反対側より2倍大きく, 力に対する傾斜角の影響は両側で等しい.2. 傾斜したブラケット等に直線のワイヤーを挿入した時の変形は, ワイヤーのサイズ, 断面形態, 材質によらず同じ形となり, その変形は三次曲線で表すことができる.3. ブラケットにワイヤーを挿入するような場合, 片側のみのブラケットが傾斜している条件では, ワイヤーの性状に関わらず臨床的に力系計測が可能で, 傾斜していない側のアタッチメントがブラケットの場合とリンガルボタンの場合では, 前者の垂直力が2倍大きくなる.
著者
遠藤 教昭 菅原 準二 三谷 英夫
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.58, no.2, pp.105-115, 1999
被引用文献数
3

本研究の目的は, 骨格型下顎前突症における垂直的顔面骨格パターンと脳頭蓋形態との間に関連性があるかどうか, すなわち, Short face群とLong face群の脳頭蓋形態に差異が認められるかについて検討することである.研究対象は, 未治療女子骨格型下顎前突者398名(暦齢6歳0カ月∿27歳1カ月)で, 暦齢によって, 7歳, 9歳, 11歳, 成人群の4つの年齢群に区分した.それらの側面頭部X線規格写真の透写図上で設定した変量に統計処理を適用して, 各年齢群におけるShort face群とLong face群の脳頭蓋形態の比較を行ったところ, 以下の結果が得られた.1. Long face群においては, Short face群と比較して頭蓋冠前方部の前後径が有意に小さく, 両群の差は増齢的に明確になっていた.すなわち, Long face群はShort face群よりも, 前頭部の前方成長量が少なかった.2. Long face群においては, Short face群と比較して前頭蓋底の傾斜角(FH平面に対する前頭蓋底の傾斜角)が有意に大きく, 両群の差は増齢的に明確になっていた.3. 以上のように, Long face群の脳頭蓋形態は, かつて遠藤が報告した顔面頭蓋形態と同様に, Short face群と比較して増齢的に扁平化する傾向が認められた.さらに, 脳頭蓋と顔面頭蓋のいずれについても, Short face群とLong face群の形態的な相違は経年的に明確になっていたが, 前額部がそれらの形態的調和を保つために補償的な成長を示す部位であることがわかった.
著者
金 壮律 半田 麻子 石川 博之 吉田 重光 飯田 順一郎
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
Orthodontic waves : journal of the Japanese Orthodontic Society : 日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:13440241)
巻号頁・発行日
vol.60, no.2, pp.112-117, 2001
被引用文献数
6

本研究の目的は, 口蓋部瘢痕組織が上顎の前後的成長に如何なる機序で影響を及ぼすのかを実験的に検討することである.生後20日齢の雄ウィスター系ラット45匹を用い, 粘膜骨膜を剥離することにより横口蓋縫合前後の口蓋両側部に瘢痕組織を形成した実験群, および無処置群の2群に分けた.さらに実験群を5群に分け術直後から術後8週目まで, それぞれ2週間おきに10%中性緩衝ホルマリン液にて灌流固定を行い, 上顎を切り出した.その後, 金属片を前方から3本目の口蓋ヒダの正中部とその後方約10mmの位置に埋め込んだ後, 軟X線撮影を行った.前後的成長量の計測は軟X線写真上で矯正用ノギスを用い, 頬骨前縁部と両側第一臼歯近心間, さらに両側第一臼歯近心と底蝶形口蓋縫合間の計測を行った.また, 計測値は埋め込んだ2本の金属片距離の実測値と軟X線写真上へ投影された金属片の距離で補正した.その結果, (1)両側第一臼歯近心と底蝶形口蓋縫合間距離においては, 実験群が無処置群に比べ前後的増加量は少なく, (2)頬骨前縁部と両側第一臼歯近心間距離においては, 実験群と無処置群の間では前後的増加量に大きな差は認められなかった.(3)無処置群においてはラットの顎発育に前後的な成長スパートが認められたが, 実験群ではそれが認められなかった.これらの実験結果から, 口蓋部瘢痕組織は上顎の前後的成長を抑制し, それは瘢痕組織により横口蓋縫合部での骨添加が阻害されたためと推測された.また, 顎発育の成長スパート以前に縫合をまたいで形成された瘢痕組織は, 上顎の前後的成長を大きく抑制することが示唆された.
著者
保崎 輝夫 武山 治雄
出版者
日本矯正歯科学会
雑誌
日本矯正歯科学会雑誌 (ISSN:0021454X)
巻号頁・発行日
vol.54, no.4, pp.234-245, 1995-08
参考文献数
37
被引用文献数
10

亜鉛は生体にとっての必須金属であるが, その欠乏が下顎頭軟骨に及ぼす影響はほとんど知られていない.そこで, 実験的に亜鉛欠乏食を投与したラットで下顎頭軟骨における成長発育, 軟骨基質の初期石灰化への影響と, 実験的な歯の移動を行った場合にどのような変化が生じるのかを光学顕微鏡および電子顕微鏡的に観察した.その結果, 以下の知見を得た.1. 下顎頭軟骨の幅, とくに肥大層が減少し, 菲薄化していた.2. 軟骨基質の初期石灰化は著しく阻害されていた.3. 骨髄側の骨基質の石灰化状態は, 粗なものになっていた.4. 石灰化に関与すると考えられる, 炭酸脱水酵素の活性は著しく減少していた.5. 実験的な歯の移動を行った場合, 歯槽骨に著しい穿下性骨吸収が生じていた.以上の結果から, 亜鉛の欠乏は種々の障害を引き起こすことが明らかとなった.したがって, 食餌中の亜鉛は非常に重要な成分であることが示唆された.