著者
石川 由希
出版者
日本比較生理生化学会
雑誌
比較生理生化学 (ISSN:09163786)
巻号頁・発行日
vol.33, no.4, pp.191-202, 2016-12-26 (Released:2017-01-13)
参考文献数
93

シロアリは,高度に発達した社会構造を持つ昆虫である。この社会性は,ほぼ同一のゲノムから生まれた個体が異なるふるまい(=分業)をおこなうことによって成立している。どのような仕組みで同一ゲノムから生まれた個体が異なる行動や形態を示すようになるのだろうか?また単独性の祖先種から,どのように複雑な社会性が進化したのだろうか? 本稿ではまず,シロアリの社会性に関して,特に混乱しがちな特殊な用語を含めながら解説する。次に,同一のゲノムから異なる表現型が分化する発生経路やその仕組みに関して紹介する。さらに,それぞれの個体が異なるタスクを分担する神経生理学的基盤に関する最新の研究を紹介する。最後に,シロアリの社会性進化がどのような生理/神経機構の改変に起こってきたのかを考察する。