- 著者
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石本 光則
- 出版者
- 公益社団法人 日本口腔インプラント学会
- 雑誌
- 日本口腔インプラント学会誌 (ISSN:09146695)
- 巻号頁・発行日
- vol.29, no.4, pp.226-235, 2016-12-31 (Released:2017-02-10)
- 参考文献数
- 42
炎症の障害性刺激因子は物理的作用,科学的作用,病原微生物の作用に大別される.
一般的にインプラント周囲炎とは病原微生物の作用による炎症であり,対処法として汚染されたインプラント表面の除染にフォーカスが当てられているのが現状であろう.しかし,感染したからその部位のインプラント表面をレーザー照射,β-TCPの粉末の噴射,各種回転切削器具による機械的清掃等で除染するという短絡的な考えではインプラント周囲炎の問題は解決されないであろう.
筆者は何故その部位がインプラント周囲炎に罹患したのかが非常に大切であると考えている.そしてインプラント周囲炎は病原微生物の作用に物理的作用が深く関わっていることに気付いてくる.顎口腔系の力の歪が集中している部位が結果的に感染性のインプラント周囲炎になることが多い.天然歯で認められる感染から力の作用をともない発症する歯周炎とは逆で,力(物理的作用)が主導で後に感染するパターンがインプラント周囲炎には多く存在すると考えている.力の作用による炎症が起こす組織破壊が感染を誘発する可能性がある.
無論,病原微生物の作用に対しての対処は必須であり,局所的な部位のみの対処ではなく,宿主へのアプローチが重要になってくる.口腔内の歯周病菌のコントロールは必須であり,その対処とそして抗菌療法を詳しく解説したい.