著者
石橋 信彦 鎌田 薩男 石田 和男 片瀬 彬
出版者
公益社団法人 日本アイソトープ協会
雑誌
RADIOISOTOPES (ISSN:00338303)
巻号頁・発行日
vol.13, no.1, pp.7-12, 1964-01-15 (Released:2010-09-07)
参考文献数
13
被引用文献数
1 1

フッ素化合物中のフッ素と塩化ナトリウム中の臭素を14MeV中性子で放射化分析する研究を行なった。速中性子はCockcroft-Walton型加速器を用い, D-T反応により発生させた.分析すべきフッ素試料にはテフロン (およびテフロンFEP) , フッ化ナトリウム, フッ化カルシウム, およびケイ・フッ化ナトリウムを用い, 臭素試料には臭化ナトリウムと塩化ナトリウムの混合物を用いた。衝撃時間はフッ素試料に対しては120分, 臭素試料は6分とし, 50~70rpmの回転台上で衝撃した。衝撃位置での中性子束は通常約106n/cm2・sec程度であった。128チャネル (またはシングルチャネル) γ線スペクトロメーターおよび減衰曲線で調べた結果, フッ素試料から放射される7線は0.51MeVのγ線だけであり, このγ線は19Fの (n, 2n) 反応で生ずる18Fからのものであることがわかった。純臭化ナトリウムの場合には大きな0.51MeVの光電ピークと小さな0.62MeVのピークが認められた。前者は79Brの (n, 2n) 反応で生ずる78Brからのものである。大量の塩化ナトリウムが臭化ナトリウムと混合した試料の場合は, 0.51MeVのγ線の減衰は通常の片対数プロットを行なうとき直線にならない。この直線からのかたよりは34Clからのγ線によるものと考えられるので, 分析の場合にはこのγ線の放射能を全計数から差引いだ。これには純食塩を放射化させたときの放射能を用いた。0.51MeVの光電ピークの放射能から計算したフッ素および臭素の含量は化学分析値とよく一致した。塩化ナトリウム中の臭素は0.8%程度の含量まで比較的精度よく分析できることがわかった。
著者
小原 人司 石橋 信彦 安部 清実
出版者
公益社団法人 日本分析化学会
雑誌
分析化学 (ISSN:05251931)
巻号頁・発行日
vol.19, no.1, pp.48-54, 1970-01-05 (Released:2010-05-25)
参考文献数
17
被引用文献数
9 7

第4級アンモニウム塩によるモリブデン(VI)-ピロカテコールバイオレット錯体の抽出とこれを利用する微量モリブデン(VI)の抽出吸光光度定量法について検討した.モリブデン(VI)とピロカテコールバイオレットとの錯体は第4級アンモニウム塩のdialkyl monomethyl benzylammonium chlorideの存在で種々の有機溶媒に抽出される.有機層に抽出された錯体の組成は配位子濃度や水溶液のpHによって異なるが,これらの錯体のうち0.25~0.6Mの塩酸溶液からクロロホルムに抽出される錯体は560mμに吸収極大波長を有し,モリブデン(VI)とピロカテコールバイオレットとの結合モル比は1:2である.抽出された錯体の吸光度に影響を及ぼす諸因子の検討の結果,定量の最適条件ではモリブデン(VI)濃度0.1~10×10-6Mでベールの法則が成立する.スズ(IV)およびタングステン(VI)はモリブデン(VI)の定量を妨害する.ジルコニウム(IV)は錯体を生成するが抽出されない.なお,第4級アンモニウム塩による抽出法を併用することによって,酸性溶液中でピロカテコールバイオレットのカルボニル基へ付加した水素イオンを解離させることができることを認めた.