著者
福本 勉 石沢 謙哉 武藤 直紀
出版者
一般社団法人日本土壌肥料学会
雑誌
日本土壌肥料學雜誌 (ISSN:00290610)
巻号頁・発行日
vol.63, no.3, pp.325-331, 1992-06-05
被引用文献数
6

非マメ科木本植物に共生して窒素固定を行う放線菌フランキアを効率よく分離し,かつ分離フランキアの根粒着生や窒素固定能を簡便に評価する方法として,試験管内養液栽培法を検討した.1) 表面殺菌した自生オオバヤシャブシ根粒より調製した根粒磨砕液を,試験管内で無窒素 H_<OAGLAND> 培地による養液栽培法を用いて無菌的に育てたオオバヤシャブシ幼植物に接種したところ,効率よく根粒着生することを認めた.2) 試験管内養液栽培によって得たオオバヤシャブシ根粒を表面殺菌後二分し,フランキア培地で培養することによってフランキア様微生物が効率よく分離できた.改良 Qmod 培地で継代培養した同微生物は培養特性,形態的特徴および再接種試験により根粒を着生し,アセチレン還元法により窒素固定能をもつことが確認されたことからフランキアと同定した.3) 分離したフランキアの接種によって,試験管内養液栽培した無菌オオバヤシャブシ植物体に効率よく根粒が着生した.4) フランキアの純粋分離および分離フランキアの評価を行ううえで,本試験管内養液栽培法は下記のような利点があった.(1) 実験室内において無菌的な植物栽培ができ,かつ小面積で大量の試料を同時に取り扱うことができる.(2) 根粒の着生状況や植物地下部の生育状況を経時的に観察でき,かつ生育途中の管理が容易である.これらの結果から,試験管内養液栽培法による接種試験評価法はオオバヤシャブシ以外のフランキア植物からのフランキアの純粋分離や共生窒素固定系の解析に対しても広く応用できるものと考えられる.