著者
石澤 きぬ子
出版者
THE JAPANESE SOCIETY OF PEDIATRIC ALLERGY AND CLINICAL IMMUNOLOGY
雑誌
日本小児アレルギー学会誌 (ISSN:09142649)
巻号頁・発行日
vol.5, no.3, pp.144-151, 1991-09-25 (Released:2010-04-30)
参考文献数
13

妊婦本人又は夫, 上の子にアレルギー疾患の既往を有する198例中1歳半から2歳まで追跡できた母子78組につき, 妊娠中および授乳中の食物の除去の有無と患児の臨床症状, 血清IgE値, 特異的IgG値 (卵, 牛乳, 大豆, ダニ) との相関を検討した. 実際の採血は妊娠6~7ヶ月時, 臍帯血, 生後は6ヶ月毎に反復採血した. またアンケート調査により妊娠中又は出産後の卵, 牛乳除去が母親の心理面に与える影響についても検討した.その結果, (1)喘鳴発症は妊娠早期除去群では16例中0例, 妊娠後期除去群では31例中10例に認められた. (2)アトピー性皮膚炎の発症と妊娠中の食物除去時期との間には喘鳴群ほど顕著な差はなかったが, 早期除去群で発症が少ない傾向があった. (3)アレルギー症状ないし疾患の発症と生後各時期における血清IgE値との関係については, 有症状例では血清IgE値はいずれの時期についても高値を示し, かつ母体血, 臍帯血のIgE値がすでに有意の高値を示した. (4)母乳栄養でしかも母親が牛乳を除去にしていた群では牛乳特異的IgG値は他の群にくらべ有意に低く, アレルギー発症はほとんど認められなかった. (5)妊娠中より卵, 牛乳を除去することに対し, 心理的ストレスのあった妊婦は少なく, 除去していた47例中42例が除去していてよかったと答えた.