著者
石田 三成
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.191-211, 2015 (Released:2021-10-26)
参考文献数
9
被引用文献数
1

本稿では,2013年に行われた国による地方公務員給与の削減要請に焦点を当て,国が要請するに至った経緯や地方財政計画の変化を簡単に整理し,それに対する市町村の対応の違いを定量的に分析した。その結果,以下が明らかとなった。第1に,今回の給与削減要請は,基準財政需要額のうち給与費分の一部が減額される仕組みになっていることから,これに反応して普通交付税の交付団体は給与削減の実施確率を上昇させた。第2に,国は過去に行革に取り組んできた市町村ほど国からの恩恵(基準財政需要額の増加)が増える仕組みを地方財政計画に盛り込み,これまでの地方公共団体の行革努力に報いようとしたが,過去に行革を取り組んできた交付団体に強い所得効果が働き,結果として,ラスパイレス指数の引き下げを抑制した。第3に,国の給与減額要請に対応した市町村は,ラスパイレス指数を約3ポイント引き下げただけでなく,国公準拠の原則に従い,ラスパイレス指数が100を超過した分の約6割を圧縮した。第4に,財政状況の悪化は,ラスパイレス指数の圧縮の程度にはあまり影響を与えないが,給与削減を実施する確率を高めた。第5に,地方公務員の労働基本権は制約されているとはいえども,職員組合の存在はラスパイレス指数の抑制を緩和させる方向に働いていた。
著者
石田 三成
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.10, pp.224-241, 2014 (Released:2021-10-26)
参考文献数
8

本稿では北海道内の市町村を対象として,①市町村が銀行等引受債を起債するにあたり,地域金融機関同士の競争環境が弱いと,地域金融機関の交渉力が強くなるため,銀行等引受債の金利スプレッド(対財政融資資金貸付金利)が上昇する,②公的資金のウェイトが高い地域では,公的資金が地域金融機関の競合相手として機能するため,地域金融機関による寡占の弊害が小さくなり,銀行等引受債の金利スプレッドも低下する,という2つの仮説を定量的に検証した。その結果,2つの仮説がともに支持された。主要な結論は以下のとおりである。まず,入札や見積合わせに参加する地域金融機関数が多くなるほど,銀行等引受債の金利スプレッドは低下することが明らかとなった。次に,非競争的な随意契約であっても指定金融機関以外の金融機関から資金を調達することで,わずかに金利スプレッドを引き下げることが可能である。最後に,公的資金のシェアが高い地域ほど銀行等引受債の金利スプレッドが低くなる傾向が確認され,公的資金は地域金融機関による寡占の弊害を軽減していることが示唆された。
著者
林 正義 石田 三成
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.4, pp.252-267, 2008 (Released:2022-07-15)
参考文献数
14
被引用文献数
2

本稿では交付税措置が地方単独事業に対する効果を平均処置効果として1990年代の各年に関して推計した。その結果,交付税措置は1996~97年を除き,90年代を通じて地方単独事業に有意な影響を与えていたことが示された。