著者
石田 篤行 益子 直子 箕輪 美紗斗 湯田 兼次
出版者
公益社団法人 日本視能訓練士協会
雑誌
日本視能訓練士協会誌 (ISSN:03875172)
巻号頁・発行日
vol.41, pp.201-206, 2012 (Released:2013-03-15)
参考文献数
18

【目的】生体共焦点顕微鏡を用いて、流行性角結膜炎(以下、EKC)の急性炎症後に角膜混濁を残した症例の角膜障害について検討した。【対象および方法】対象は、きくな湯田眼科にてEKCの急性炎症後、角膜混濁を残した症例10名19眼(8歳~77歳、平均年齢39.4歳:男性7名、女性3名)とした。方法は、生体共焦点顕微鏡を用いて角膜各層および角膜神経叢の観察を行った。また、Cochet-Bonnet角膜知覚計を用いて角膜知覚の測定も行った。【成績】すべての症例において、角膜内皮、実質深層に大きな異常は見られなかった。一方、実質浅層には細隙灯顕微鏡で観察された混濁に相当する異常所見が見られた。特に基底下神経叢では神経密度の低下、神経線維屈曲度の異常などの神経障害を意味する所見が捉えられた。また、平均角膜知覚は2.10±0.44g/m3で有意差を認めた。(Aspin-Welchのt検定、p<0.001)【結論】今回、EKC急性炎症後に角膜混濁を残した症例で角膜神経叢に異常所見が捉えられた。この結果より、角膜神経叢の障害が重度の場合、神経叢のリモデリング(再構築)の異常をきたすと推定される。そのため、神経由来の再生因子に障害を生じ、角膜混濁など病変の治癒が遷延化することが想定される。