- 著者
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清家 幸子
川口 英里香
石黒 千鶴
- 出版者
- 日本重症心身障害学会
- 雑誌
- 日本重症心身障害学会誌 (ISSN:13431439)
- 巻号頁・発行日
- vol.41, no.2, pp.319, 2016
はじめに私たちは2015年5月に予期せぬ死亡事例を経験し、当日居合わせたスタッフと周囲のスタッフの中に疑問が解決されないまま不信感につながり困惑した空気が病棟内に流れることになった。そのため事故分析チャートをもとにグループワークを行い事故要因の共有、初期段階でそれぞれの思いが語れる場となり、前向きに今後の事故再発防止に取り組むことができたのでここに報告を行う。事例63歳男性診断名は脳性麻痺、知的障害、徐脈頻脈症候群。大島分類:1。日常生活全介助、自力での動作は困難。事故発見時の状況19:10発見。発見時は布団に入床、多量の発汗、深めの側臥位、廊下と反対方向を向き顔を枕で埋めている体勢で心肺停止、嘔吐の様子もなく顔色蒼白、窒息または循環器疾患が主な原因として考えられた。実施および結果事故後の病棟の対応として、事実の確認を明確にし、皆が当事者意識を持ってもらいスムーズな業務改善を行うこと、リフレクションの機会にすることを目的とし、要因の背景を全スタッフと共有していくために6〜10名ほどのグループに分け説明した。また、疑問や不安な声に対してはミーティング等を活用し、早急に解決していくようにした。次に強化月間として2カ月間、ミーティング時に安全チーム10か条を読み上げ、指差し確認を実施。これによって皆が急変時に必要な情報を確認し、チームとして取り組むことで安全風土が構築されつつあると考えられた。考察チームで早期に事実背景を共有することは改善に向けた構築にはとても重要であり、分析を可視化することで一つの事例にはいくつもの要因背景が重なり合っていることを明確にすることができた。しかし死因が明確にされていないことで当日居合わせた職員の罪悪感は軽減することはできても無くすことはできない。医療事故調査制度の施行もあり、このような事故事例発生時のセンターとしてのシステムの構築が今後の課題となっている。