著者
碇山 洋
出版者
日本財政学会
雑誌
財政研究 (ISSN:24363421)
巻号頁・発行日
vol.1, pp.163-176, 2005 (Released:2022-07-15)
参考文献数
6

高度経済成長期から形成されてきた公共事業依存型経済,公共投資偏重型財政も1990年代末から大きな転機を迎えている。公共事業縮減への転換のもっとも重要な契機は多くの論者が指摘するように財政危機であるが,本稿は,財政危機を実際の政策転換に媒介する他の諸契機を,資本蓄積,なかでも公共事業と最も直接的に関係する建設業の資本蓄積との関連で検討する。公共事業によって独特の蓄積パターンをたどってきた建設業の過剰蓄積がバブル崩壊後,膨大な不良資産・不良債権を生み出し,財政危機下での公共事業縮減の足かせとなる。そうした状況での公共事業縮減への転換を,日本企業の海外進出と分化,それらを反映した財界内部での公共事業政策をめぐる対立と決着をふまえて論じ,公共事業縮減の意義をしめす。