著者
神戸 雅史
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
no.15, pp.81-96, 2018-03-31

『古今和歌集』は醍醐天皇の勅命により、紀友則・紀貫之等が撰者となり、延喜五年(九〇五)に奏上された。我が国最初の勅撰集ということもあり、後世、扱いが重んじられてきた。このことによって、歌壇の発展と推移に大きな影響を与え、故実の成立、和歌教養の必須化、師弟関係の成立等が起きた。また、歌壇にも政治情勢が関わり始める。流派と門閥の成立及び紛争、家と家系尊重による権威化等の様々な要素が積み重ねられ、研究成果を相伝する歌学伝授が発生することとなる。現在の我々は、和歌と書を分離させて考えがちであるが、元来、書は和歌の一構成要素である。和歌を学ぶことは読み書きが必須事項となる。即ち、和歌の教授は仮名の筆法や和歌の筆法、紙に合った書き方等をも含んでいると考えて良いのではないだろうか。よって、本稿では、『古今和歌集』の歌学伝授である古今伝授において、古今和歌集歌の解釈に留まらず、書風も伝授していったと考え、検討していく。