著者
野中 直之 髙田 智仁 西片 由貴 ノナカ ナオユキ タカダ トモヒト ニシカタ ユキ Nonaka Naoyuki Takada Tomohito Nishikata Yuki
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-27, 2014-03-31

手鑑とは、古人の筆跡(手)である古筆切や短冊、色紙等を鑑賞や手習いの手本(鑑)とするために貼り込んだ帖のことを指す。本手鑑は2004年度に大東文化大学図書館に受け入れられたものである。縦38.8センチ、横25.6センチである本手鑑は、表面66葉・裏面66葉の計134葉を収め、聖武天皇、光明皇后から始まる基本的な手鑑行列の配列に従っているものの、貼り替えの跡が多数見られ、また手鑑行列も乱れている点から、製作当初とは所収内容が変更されていると思われる。しかしながら、伝藤原有家筆「墨流切(多田切)」、伝西行筆「曽丹集切」、伝藤原俊成筆「顕広切」などの固有古筆名を有した名物切も所収する。本解題は表面二回・裏面二回の計四回に分けて掲載を予定し、本年度は表面のうち、冒頭の「聖武天皇」から「中院殿通村公」までの37葉を扱うものである。
著者
髙橋 裕次
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
no.15, pp.A29-A35, 2018-03-31

デジタルマイクロスコープを使って料紙を観察していると、たとえば掛幅装などの場合、料紙の重さを計れないため、料紙の特性を検討するための密度を知ることができないなどの困難に遭遇する。また透過光による観察で、表装の肌裏、増裏、総裏など裏打ち紙の繊維の影が一緒に写ってしまい区別ができないこともある。そこで、繊維の形状や添加物などをより把握しやすくする方法がないかと考えていたところ、顕微鏡の開発に携わっている技術者との会話のなかで、最新型の顕微鏡のもつEDOF(強化被写界深度)機能を応用して、繊維の状態を把握できるかもしれないと考えるにいたった。EDOFは、焦点距離の異なる一連の画像を組み合わせて一枚の画像を合成することにより、被写界深度(焦点の合う範囲)を拡大するものである。料紙に下からの透過光をあてながらEDOF機能をもつ顕微鏡で撮影した、焦点距離の異なる一連の画像をそれぞれに分析することで、内部の繊維、添加物の状態と、その正確な位置が確認できる。料紙の現状を損なわずに、その内部の様子を容易に観察することが可能になれば、料紙の研究もさらに進展すると思われる。
著者
田中 春菜
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
no.17, pp.77-86, 2020-03-31

本稿は、後水尾院(一五九六―一六八〇)を中心とした後水尾サロンに見える書の活動を概観していくと同時に、その構成員のなかで着目される機会の少なかった中院通村(一五八八―一六五三)と藤谷為賢(一五九三―一六五三)を書文化形成を担った主要人物として取り上げ、これらの人物についての先行研究をまとめ、今後の研究の意義や目的を見出すためのものである。ここでは、主な先行研究を概観し、今後の研究課題を整理していく。また、これまで書道史研究では、後水尾サロンにおける文化活動について述べられることは少なかった。この時代に行われた書の活動は、後水尾院を中心に行った文化活動、特に歌と茶と複雑に絡み合って展開されていく。よって、後水尾サロンについての概要とそこで行われた書の活動も確認する。
著者
野中 直之 髙田 智仁 西片 由貴 大澤 一輝 栗原 早紀 小林 大泰 染谷 慶子 李 輝
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.3-26, 2015-03-31

手鑑とは、古人の筆跡(手)である古筆切や短冊、色紙等を鑑賞や手習いの手本(鑑)とするために貼り込んだ帖のことを指す。本手鑑は2004年度に大東文化大学図書館に受け入れられたものである。縦38.8センチ、横25.6センチである本手鑑は、表面66葉・裏面66葉の計134葉を収め、聖武天皇、光明皇后から始まる基本的な手鑑行列の配列に従っているものの、貼り替えの跡が多数見られ、また手鑑行列も乱れている点から、製作当初とは所収内容が変更されていると思われる。しかしながら、伝藤原有家筆「墨流切(多田切)」、伝西行筆「曽丹集切」、伝藤原俊成筆「顕広切」などの固有古筆名を有した名物切も所収する。本解題は表面2回・裏面2回の計4回に分けて掲載を予定し、2回目に当たる本年度は表面のうち、後半の「大覚寺殿義俊」から「徹書記正徹」までの29葉を扱うものである。
著者
野中 直之 髙田 智仁 西片 由貴 ノナカ ナオユキ タカダ トモヒト ニシカタ ユキ Nonaka Naoyuki Takada Tomohito Nishikata Yuki
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.3-27, 2014-03-31

手鑑とは、古人の筆跡(手)である古筆切や短冊、色紙等を鑑賞や手習いの手本(鑑)とするために貼り込んだ帖のことを指す。本手鑑は2004年度に大東文化大学図書館に受け入れられたものである。縦38.8センチ、横25.6センチである本手鑑は、表面66葉・裏面66葉の計134葉を収め、聖武天皇、光明皇后から始まる基本的な手鑑行列の配列に従っているものの、貼り替えの跡が多数見られ、また手鑑行列も乱れている点から、製作当初とは所収内容が変更されていると思われる。しかしながら、伝藤原有家筆「墨流切(多田切)」、伝西行筆「曽丹集切」、伝藤原俊成筆「顕広切」などの固有古筆名を有した名物切も所収する。本解題は表面二回・裏面二回の計四回に分けて掲載を予定し、本年度は表面のうち、冒頭の「聖武天皇」から「中院殿通村公」までの37葉を扱うものである。
著者
神戸 雅史
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
no.15, pp.81-96, 2018-03-31

『古今和歌集』は醍醐天皇の勅命により、紀友則・紀貫之等が撰者となり、延喜五年(九〇五)に奏上された。我が国最初の勅撰集ということもあり、後世、扱いが重んじられてきた。このことによって、歌壇の発展と推移に大きな影響を与え、故実の成立、和歌教養の必須化、師弟関係の成立等が起きた。また、歌壇にも政治情勢が関わり始める。流派と門閥の成立及び紛争、家と家系尊重による権威化等の様々な要素が積み重ねられ、研究成果を相伝する歌学伝授が発生することとなる。現在の我々は、和歌と書を分離させて考えがちであるが、元来、書は和歌の一構成要素である。和歌を学ぶことは読み書きが必須事項となる。即ち、和歌の教授は仮名の筆法や和歌の筆法、紙に合った書き方等をも含んでいると考えて良いのではないだろうか。よって、本稿では、『古今和歌集』の歌学伝授である古今伝授において、古今和歌集歌の解釈に留まらず、書風も伝授していったと考え、検討していく。
著者
栗 躍崇 リツ ヤクスウ Ritsu Yakusu
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
vol.11, pp.69-78, 2014-03-31

『燕下都(上)』(河北省文物研究所編、一九九六年八月文物出版社刊)八四一頁に載せる一件の燕国古璽の印文に対して、後年に発表された釈読が気になった。その璽印は、河北省武陽台村で採集された。陽文の印面は長細形で枠がなく、印体には八稜柱形の柄がついている。柄の末端はやや太く、一側面に半円形の環鈕がある。『燕下都(上)』では印文を釈読していない。印の高さは10.7cm、縦:4.4cm、横:1.1cmである。『燕下都(上)』の839頁(図版四八四)には、印影と印鈕の図版があり、『燕下都(下)』図版-七九(六)には、カラーの写真図版を載せている(図一)。本論文は、『古璽彙編』と『古陶文彙編』を中心に、戦国文字類に関する文献や書蹟を考査し、『燕下都(上)』841頁収載の河北省武陽台村で採集された燕国長細形璽印一件の印文を、新たに釋読しようとするものである。釈読には、文字を分解した後、再度組み合わせ、単字の場合は、燕国や同時代の他国の文字を参照する方法を用いる。
著者
江 彦穎
雑誌
書道学論集 : 大東文化大学大学院書道学専攻院生会誌 (ISSN:13489313)
巻号頁・発行日
no.17, pp.63-75, 2020-03-31

現代はカメラと顕微鏡など機械の技術が発達し、物をデータ化することがとても簡単になったことで、機械によって、作品の内部、繊維まで見られ、数値と画像を保存することができるが、完全に同じ物を制作することはできない。今後の保存・修復に役立つ模写作品を制作する際に、作品自体というよりも、本当に模写すべきものは、原作者の技法・理念と芸術性である。